成瀬巳喜男『秀子の車掌さん』
◆『秀子の車掌さん』監督:成瀬巳喜男/1941年/南旺+東宝/55分
高峰秀子は、もちろん『浮雲』などの出演に代表されるように、成瀬映画では重要な女優なのだが、成瀬−高峰秀子の初コンビ作品が、この『秀子の車掌さん』になる。原作は井伏鱒二の「おこまさん」。
この映画は、ほのぼのした喜劇。成瀬映画の高峰秀子というのは、私のなかで暗いイメージが付きまとっているが、この作品では本当に可愛らしいバスの車掌さんを演じている。ここでもやはり「靴」の主題が登場して、儲かっていないバス会社のために、給料が少なくて、新しい靴が買えない「おこまさん」(高峰秀子)がいる。靴がボロボロになって穴も開いているので、彼女は下駄に履き替えることになる。
こんな「おこまさん」がなんとか状況を打開しようと、ラジオで聞いた名所案内を、自分もやってみようと運転手と一緒に準備する。いろいろな出来事の末に、ようやく「おこまさん」たちがバスの中で名所案内を始めるが、時既に遅しというのか、すでに社長はバスを別の会社に売ってしまったというオチ。