山田詠美『A2Z』

山田詠美『A2Z』講談社文庫、2003年1月
きのうに引き続き、山田詠美の小説を読んでみた。山田詠美の作品は苦手で、これまでずっと避けてきた。苦手意識を克服しようとがんばって読んでみたが、2冊の本を読んでわかったのは、やっぱり私には山田詠美は合わないということだった。
この『A2Z』では、登場人物たちの会話がついていけなかった。一昔前の東京を舞台にしたトレンディドラマのような、「おしゃれな」人たちの会話。読んでいるこちらが恥ずかしくなってきてしまうような会話が多くて、途中で挫折しそうになった。たとえば、こんな会話。主人公の夏美が恋人の成生にワイングラスをプレゼントした場面だ。

 私が栓を抜いたワインを彼がグラスに注いだ。ワインの金色が、外側に浮かんだ水滴でたちまちぼやける。私は、窓際のクリップライトにグラスをかざした。彼が、その様子を見て溜息をついた。
「綺麗だな」
「でしょ?グラスによって、お酒って、本当に美しくなる」
「おれが言ったのは、あなたのこと」
 自分の頬が赤くなったのが解った。間接照明の薄暗さの中で、彼がそれに気付かないことを祈った。(p.86)

読んでいる私のほうが赤くなってしまう。「おれが言ったのは、あなたのこと」だって…。こんな台詞を言う成生は、郵便局に勤めている25歳の青年なのだけど。
要するに、私は美男美女が出てくる恋愛小説が苦手なのだ。
ところで、昨日読んだ『PAY DAY!!!』でもハーモニーは年上の人妻と恋愛関係にあったが、『A2Z』でも年上の人妻と年下の男性の恋愛関係が描かれている。女性が年下の男性と恋愛するというのは、山田詠美のパターンなのだろうか。他の小説でも、このような関係が描かれていると面白い。どうして、年下の男性との恋愛を描くのだろう?。
(追記)もうひとつ気になることは、恋と花火の結びつきだ。夏美と成生が、成生のマンションのベランダで花火をする場面がある。この直後に別れ話が出て、結局二人は別れてしまうのだけど、恋の終りが花火(のイメージ)に喩えられているわけだ。恋は花火のようだというのは今ではありふれた言い回しだが、それにしても、この表現はいつごろ誕生したのだろうか。恋が花火のイメージと結びついたのは、いつ頃、どのようにしてなのか。

A2Z (講談社文庫)

A2Z (講談社文庫)