成瀬巳喜男『秋立ちぬ』

◆『秋立ちぬ』監督:成瀬巳喜男/1960年/東宝/79分
これは、子供が主人公の作品。父を亡くし、母が愛人と家出をしてしまった男の子と、妾の子である少女が出会い、二人が短い交流をする物語。
悪い作品ではないが、あまり私の好みの作品ではなかった。
男の子の母親を乙羽信子が演じている。そして、乙羽信子といい関係になってしまう旅館のお客を加東大介が演じている。この加東大介は、小津の『秋刀魚の味』では、けっこういい味を出していて、良いおじさんという雰囲気の役なのに、成瀬の映画ではいつもイメージの悪い役ばかりやっているような気がする。この映画でも、あっという間に、母親の乙羽信子を誘惑して(きっとお金の力を使ったのだろう)、彼女の息子の立場を窮地に追いやる。まったくとんでもない男だ。しかし、そのいかにも小狡そうな表情と、加東大介の丸っこい体型がユーモラスでもあるのだが。