藤原保信『自由主義の再検討』

◆藤原保信『自由主義の再検討』岩波新書、1993年8月
本書は、自由主義はどのように正当化されてきたか、その歴史をたどる。つぎに自由主義に対立するものとして社会主義がいかなる挑戦をしてきたのか検討し、最後にリバタリアニズムコミュニタリアニズムの論争をふまえた著者の考えが述べられている。
著者が関心を寄せているのは、コミュニタリアニズムである。それは著者の思想として、人は相互依存関係のなかに存在しているというものがあるからだ。したがって、関係の網の目のなかにいる人間は利己的な快楽のみを追求するわけにいかない。共通善に向かっていく、そのような姿勢が提唱されている。
さらに、著者は、この相互関係を人間だけの関係におさめない。著者は、「自然」をも含むことを考えている。自然との共生、より良い関係の構築を目指すことが必要なのだ。
共通善を目指すといっても、もちろん著者は個々の差を無視していない。そのへんは慎重だ。「実践そのものの場、つまり関係の網の目をおのれの属する小集団に始まって、可能なかぎり拡大していくことが必要(p.192−193)」だと述べている。あらかじめ、どのような行為が共通善となるのかを決めておくことが必要だろうと示唆している。
私は、こういう考えにすぐに納得してしまいがちだが、それは「自由」に対して「利己的」だという思い込みがあるからだろう。もちろん、「自由」とはそういうものではないと考えるのだが、「利己的」なイメージが骨の髄まで染みついていて、どうしても「自由」礼讃になれない。この思い込みを打ち壊していかねばと思う。

自由主義の再検討 (岩波新書)

自由主義の再検討 (岩波新書)