福田歓一『近代民主主義とその展望』

福田歓一『近代民主主義とその展望』岩波新書、1977年6月
前半で民主主義の歴史を振り返り、後半において民主主義の理論を検討、そして今後の展望を論じる一冊。各国において、民主主義がいかに展開してきたか簡潔にまとめてあり民主主義について知るには便利な本。

 こういう複雑な社会のなかでは政治の動きそのものもはなはだ複雑になる。自分の身の回りの日常経験の枠では、とても全部を理解することはできない。そういう場合に、いちばん簡単に判断する方法は、白か、黒か、いいか、悪いかのモラリズムであります。まさに政治が情緒化・情動化した時代であるだけに、このモラリズムは、政治の側の長い視野のなかでリアリズムを貫いていこうという努力には、たいへん大きな制約として働くことになりかねないのであります。(p.169)

むかしから問題は変わっていないのだなと、この箇所を読んで思う。こうした政治の情緒化に流されないためにも、「教養」が必要なのだろう。民主主義が、「民衆自身の選択の上に成り立つ政治体制(p.202)」であることに最大の強みを持っているならなおさらだ。

近代民主主義とその展望 (岩波新書 黄版1)

近代民主主義とその展望 (岩波新書 黄版1)