廣野由美子『批評理論入門』

◆廣野由美子『批評理論入門』中公新書、2005年3月
批評理論の入門書として面白い本だと思う。「入門」という部分を強調しておきたいけれど。実際、各理論のほんとに要点だけを説明しているので、内容が分かりやすい。しかも、『フランケンシュタイン』という小説を、理論を使って読んで見せてくれるので、理論にはじめて接した者にとっては、理論の内容だけでなく使い方も理解できてありがたい。
本書は、大きく二つに分かれている。第一部は「小説技法篇」として、「冒頭」から「結末」まで、小説というものがいかにして書かれているのか、代表的な手法の15個を紹介している。第二部では「批評理論篇」として、「伝統的批評」からたとえば「ジェンダー批評」「ポストコロニアル批評」といった現代の批評理論までを簡潔に紹介する。先に述べたように、ここで各理論を用いて、具体的に『フランケンシュタイン』を読解している。この分析を読むと、理論がすごいというより、『フランケンシュタイン』というテクストのほうに興味が引かれてしまう。どんな理論も許容してしまう、この『フランケンシュタイン』はたしかに豊かなテクストだ、ということなのだろう。
ところで『フランケンシュタイン』と同様に、『ドラキュラ』もいろんな文学理論を使って読める小説であることを思い出す。すると、こんなことを考えてしまう。これら、いわゆる純文学と大衆文学の間にあるような小説は、どうして文学理論を適用しやすいのだろうか?

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)