森嶋通夫『思想としての近代経済学』

森嶋通夫『思想としての近代経済学岩波新書、1994年2月
この本の基本的姿勢は、「現実の経済ではセイ法則が成立しない(p.8)」ということだ。セイ法則とは、「供給はそれ自身の需要をつくる」というもの。

需要が供給より少ない(多い)場合には、供給が減らされたり(増され)、供給が需要に適応するのである。すなわちセイ法則の逆(私はそれを「反セイ法則」と呼ぶ)が成立する。それゆえ需要が少ない時には、生産は沈滞し、失業が生じる。経済学者が容易に成立すると考えた完全雇用は、需要が充分に大きい異常事態の他は成立せず、反セイ法則下の現実の経済では、失業が存在するのが常態である。(p.8)

というわけで、本書は「反セイ法則」下の経済分析の重要性が説かれ、そのために経済学は他の社会科学(とくに社会学)との統合は必須になるという。

思想としての近代経済学 (岩波新書)

思想としての近代経済学 (岩波新書)