金子務『江戸人物科学史』

◆金子務『江戸人物科学史 「もう一つの文明開化を」訪ねて』中公新書、2005年12月
これは面白かった。江戸時代の学者、特に洋学者を中心に紹介し、そのなかで科学技術や知識が日本にどのように受容されたのかを論じている。
著者は、その際、各人物のゆかりの地を訪ねている。そのために、日本各地を旅することになった。本書は、日本の科学史をめぐる旅行記という一面もあるのだ。
よく知られた人物から、あまり知られていない人物まで取り上げており、それだけでも参考になるし、人物同士の繋がりも分かって面白い。江戸の知的ネットワークが興味深い。それにしても、江戸の学者はよく勉強しているなと思う。常に書物を読んでいた、なんていう逸話がけっこう出てくる。辞書もない時代に、外国語の書物を読解しているのだから、江戸の学者のパワーにはいつも驚かされる。