サラ・サリー『ジュディス・バトラー』

◆サラ・サリー『ジュディス・バトラー青土社、2005年12月
ジェンダー・トラブル』で有名なバトラーの入門書。セックスやジェンダーに関するバトラーの理論はさまざまな方面で大きな影響を与えているが、その一方で、なんでもバトラーの書くものは、「不明瞭」で「遠回し」で「矛盾に満ちている」と悪名が高いそうだ。その文体は「いじめ」だと評されたこともあるという。たしかに、『ジェンダー・トラブル』は難解だった覚えがある。しかし、『ジェンダー・トラブル』は、けっこう面白い内容だった。
本書は、このように「難解」と言われるバトラーの理論をかなり丁寧に紹介している。用語の説明もあるし、各章の終りにはかならずその章の要約を書いているのも、本書の理解に役立つ。本書は、バトラーの著作を発表順に読み解いていく。読み解くキー概念は「主体」「ジェンダー」「セックス」「言語」「精神」である。そして、最後の章は「バトラー以後」と称して、バトラーの理論に対してなされた批判も紹介されており、全体としてバランスの取れた良書だと思う。
「主体」についてのバトラーの議論が気になる。そもそもバトラーの最初の本はヘーゲル研究(20世紀のフランスにおけるヘーゲル思想の受容)だった。そこからも分かるように、バトラーの理論には、ヘーゲルの思想が重要な位置を占めている。ヘーゲル的な「主体」を乗り越えることが目指されているのだ。

ジュディス・バトラー (シリーズ現代思想ガイドブック)

ジュディス・バトラー (シリーズ現代思想ガイドブック)