チャン・イーモウ『単騎、千里を走る。』

◆『単騎、千里を走る。』監督:チャン・イーモウ/2005年/中国・日本/108分
すばらしい映画だったと思う。高倉健が主演。息子との間に何らかの問題があって、何年も離ればなれの生活を送っている男を高倉健が演じている。この息子が、末期癌で余命幾ばくもないことが、息子の嫁から知らされる。意を決して、男は息子に会いに行くが、息子に面会を拒否される。そのとき、嫁から一本のビデオテープを受けとる。そこには、息子が中国の仮面劇を取材したときの様子が写されていた。そのビデオを見た男は、息子が「単騎、千里を走る。」という演目を撮りたかったが、残念ながら撮ることができなかったことを知る。男は、息子の意志を継いで、「単騎、千里を走る。」を撮影するために、中国へ向かうのであった。――
この映画は、高倉健の寡黙さ、不器用さをうまく活かしている。寡黙で、人付き合いが苦手な男が、言葉の通じない中国で、困難な撮影に挑む。そのためには、言葉を発しなければならない。普段はぐっと唇を閉じ黙っている男が、必死に中国の人と意思疎通を図ろうとする。そのような高倉健の姿が印象に残った。
息子との父親、日本語と中国語という何重もの壁を乗り越え、なんとかしてお互いに理解しあいたいという強い意志を感じる物語なのである。