青山真治『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』

◆『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』監督:青山真治/2005年/日本/107分
ノイズ音楽が主人公と言えるぐらい、特に映画の前半はノイズ音楽が映画館内に響き渡る。荒れる海の激しい波の音から始まったこの映画は、音を消してしまうような雪の降る場面で閉じられる。冒頭と終りの明確な対比が特徴的だ。音は、この映画で何を意味するのか。音は、人間に何をもたらすのか。
浅野忠信中原昌也が扮するミズイとアスハラという二人のミュージシャンが、あらゆる音をマイクに収めていく。その一方で、「レミング病」というウィルスによって感染する病気が人間たちを苦しめていた。このウィルスに感染すると自殺したくなってしまうという。この病気に感染した孫娘(宮崎あおい)のために、資産家(筒井康隆)が探偵を雇い、治療法を探している。その過程で、ミズイとアスハラの作り出す音楽が、この病気の治療に有効であることが分かり、探偵と資産家は孫娘を連れて、二人のもとへやって来るのであった。――
ミズイとアスハラが夕御飯を食べにやってくるペンションの女主人を岡田茉莉子が演じている。岡田茉莉子が登場するとき、白いパラソルを持っているのを見て、ニヤニヤしてしまう。やっぱり岡田茉莉子には白いパラソルなのだ。しかし、映画のパンフレットにある監督インタビューを読むと、岡田茉莉子のキャスティングは吉田喜重作品ではなく、小津の『秋日和』のおきゃんなイメージだという。言われてみれば、たしかに小津作品に登場する岡田茉莉子のイメージに近いかもしれない。死も恐れない力強さ、生き生きとした姿が印象的だった。