スティーブン・スピルバーグ『ミュンヘン』

◆『ミュンヘン』監督:スティーブン・スピルバーグ/2005年/アメリカ/164分
なかなか面白い映画だった。やはり見せ方がうまいというか、興味の惹きつけ方がうまいというか。単純に、バンバンと銃撃戦をやったり、爆弾を爆発させるだけではないのだ。爆弾を爆発させる際にも、あわやターゲット以外の人物も巻きこんでしまうのか、作戦は失敗なのかというスリルを見せておいて、それから爆発シーンを見せるという手の入れよう。物語は、要するに果てしなき報復合戦なのだから、下手をすれば単調な展開になりそうだし、しかも164分の長時間の映画なので、最後まで観客を飽きさせずに見せるのは相当難しいと思う。それをやってのけてしまうスピルバーグは、すごい。
物語は「ホーム」が重要な主題となっている。映画の途中で、「ホームがすべてだ」というセリフがあったのが、とても印象に残る。たいていの(ハリウッド)映画は、「ホーム」を出て再び戻ってくる物語なのだが、この映画では主人公が「ホーム」に戻れない、あるいは戻らない物語となっている。正確には、「家族」という「ホーム」には戻れたのだが、もう一つの「ホーム」すなわち「イスラエル」という「ホーム」には戻らないのだ。「ホーム」を守るためにやったことが、結果的には「ホーム」に戻れなくなってしまったというアイロニーが語られているのかもしれない。