ヴォルガング・ベッカー『グッバイ、レーニン!』

◆『グッバイ、レーニン!』監督:ヴォルガング・ベッカー/2003年/ドイツ/121分
微妙な映画。設定は浦島太郎のような物語で、母が昏睡状態の間にベルリンの壁は崩壊し、まったく別の社会に変化してしまった。しかし、母にその事実を教えたら、ひどいショックを受け命に関わるということで、息子は必死でかつての東ドイツを再現しようとする。喜劇であり、同時に家族愛の物語でもある。
でも、息子が必死になって、嘘をついてまで、体制崩壊の事実をひた隠しにする動機がイマイチ納得できなかった。いくら母親が、党を固く信じていたとしても(母親が、本当に共産主義を信じていたのかどうかは、最後の告白によって、微妙な位置に相対化されてしまうが)。素直に、母親に体制が崩壊してしまったことを教えるべきだったのではないか、と思ってしまう。