香西秀信『反論の技術』

香西秀信『反論の技術―その意義と訓練方法』明治図書、1995年8月
そもそも何かについて意見するとは、別の考えにたいして反論することなのだという「デリダ」の「エクリチュール」っぽい著者の考えは、かなり説得力あり。反論をレトリックつまり修辞学の一つとして説明し、いかに述べたら効果的な反論ができるのかということを教えてくれる。
第1部では、反論についての著者の説が書かれているのだけど、この文章自体が非常に良いもので、「論文」の見本のようなものだった。先行研究に対する著者の「反論」が、かなり鋭くて面白い。
第2部、第3部で「反論」術習得への具体的な方法が示される。私がいいなと思ったものは、いろいろな文章から反論の部分だけを集めて、反論集なるノートを作ってみるということ。どんな反論の型があるのか知ることもできるし、その反論に対してどんな反論が可能かを考えることでも良い訓練になる。この方法に見られるように、本書では徹底して反論の型の習得に力が注がれている。型といっても複雑なものではなく、要するに反論する箇所はきちっと引用すること、そして論証部分は箇条書きで「第一には…」「第二は…」と書くこと、この二点を初心者の訓練では徹底させることが強調されている。これは、意識すればすぐにできることだ。本書は、「反論」の技術を具体的に示しているので理解しやすい。

反論の技術―その意義と訓練方法 (オピニオン叢書)

反論の技術―その意義と訓練方法 (オピニオン叢書)