黒沢清監督トーク&上映会(@宝塚映画祭)

シネ・ピピアにて。定員50名とのことで、朝早くに映画館に行き、チケットを購入。トークは夕方5時から始まった。
私の好きな映画監督の一人である黒沢清監督なので、間近で拝見できて感激!。それだけで、見に行った甲斐があった。監督はいろいろな話しをなさったのだけど、あんまり内容を覚えてないかも。かなり興奮していたので。
黒沢監督は、神戸出身ということからトークがはじまり、高校時代に文化祭のために八ミリ映画を撮ったことがあったと。それから東京に出て大学で映画サークルで本格的に自主映画製作をしたという。ちょうどそのころ、八ミリが改良されて、カラーで音も録音できるようになった、このことが自主製作の世界で大きかったと言っていた。それまでは白黒でサイレントしか撮れなかったけど、カラーで音も入れられるようになって、商業映画並のものがつくれるようになったのだ。
その後、商業映画の世界に入った黒沢監督が、かつての宝塚映画製作所である宝塚映像でテレビ映画を撮る。約10年前のことだ。ということで、きょうは当時制作した映画の2本を上映した。一つは、学校の怪談シリーズの一作である「花子さん」。もう一つは「ワタナベ」というワンクールのドラマで黒沢監督の担当した最終回を上映する。
監督によれば、当時はまだ日本ではホラー映画がほとんどなかった頃で、この「花子さん」は、そういう意味では後のホラー映画ブームの先駆けとなるようなものだろうと。また、監督が撮った花子さんは真っ赤なコートを着ているのだけど、この真っ赤の服を着ている花子さんは、この映画が最初ではないか、ともおっしゃっていた。この映画以前には赤い服を着た花子さんはなかったと。これは、けっこう面白い話だった。もちろん、赤い服は暗闇で目立つ色ということで、監督がこだわりをもって用いたとのことだった。
「ワタナベ」は宇宙人がある一家のところでホームステイするというコメディドラマ。その最終回で、主人公の宇宙人との別れを描いた作品。
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どちらの作品も、たしかに「黒沢作品」という雰囲気があった。特に、「花子さん」はもう完全に黒沢映画の世界で、クライマックスの花子さんと主人公の遭遇の場面は、はっきりいって怖い。たとえば、『回路』あたりの雰囲気が出ていた。ホラー映画の名作だと言っていいと思う。
監督がこの宝塚映像で経験したのは、それまでの自主映画製作などでは自分の撮りたい物語を作ってきたが、そうではなく企画があって、その企画を通して映画を製作するということだったと。はじめはとまどいがあったらしいが、作っている内にそれが自分のものになっていく、そういう経験をしたという。自分の内部から撮りたいと思ったものではなくて、企画という外から来たものでも、けっきょく二つは同じことなのだということが分かったと言い、それが後でたとえばVシネマなどを作るときに大きく影響したという。だからこの宝塚映像での経験は監督にとって転換期にあたるのだと話されていたことが印象的だった。
そして、最後に役所広司さんのこと、それから現在製作中の新作映画についても話され、かなり充実したトークになったと思う。私は、監督の姿を生で見られただけで充分に満足したのだけど。やっぱり映画って良いなあと思った次第。黒沢監督の新作が楽しみだ。