ちょっとがっかり
◆『宗方姉妹』監督:小津安二郎/1950年/新東宝・東宝/白黒/サウンド版/97分
この映画は、松竹ではなくて東宝で撮った作品なのか。これはどういう経緯があったのだろうか?
それにしても、この映画は、小津らしい映画ではないように感じた。ちょっとがっかり。
笠智衆が出ていたけど、ほんとに脇役で、あんまり目立っていなかったし、どうも田中絹代は小津のような淡々とした映画には似合わないなあと。なんでだろう?どうも画面に違和感を感じてしまう。高峰秀子は、なんとか小津の映画の役者らしく振る舞っていたのだけど、田中絹代は明らかに小津映画の演技ではない。どういう違和感だったのか、説明するのが難しい。
物語の途中で、姉(田中絹代)が妹(高峰秀子)を諭すシーンがあって、そこで姉は、「新しいというのは、いつまでも古びないことだ」ということを話す。この姉は、お寺回りが好きで、父の住む京都に来ると、お寺を見て回る。そして、最後のシーンは姉と妹が京都御所を散歩するというところで終る。
まあ、小津は保守的な人なのだろうけど、この映画はすこしそんなところが、あからさまに出過ぎやしていないか、と思ったりもした。
あと、この映画にはすごいシーンが一つある。この姉が、自分の経営する店について夫と口論となる。そして、夫は、この妻が自分以外の男性を愛しているのではないかと、ずっと疑っており、そんなことを妻に言うと、妻の田中絹代は、あなたに冷たくされても、いつかは分かってもらえると信じてこれまでやってきたのに、その苦労が何の意味もないじゃないですか、と泣く。それを見た、夫が妻に平手打ちにするのだが、これがすごい。半端じゃない。普通の映画だと、夫婦喧嘩で撲つといっても、一発かせいぜい二発ぐらいだと思うのだが、この場面は違う。五、六発以上は撲っていたように思う。それは、いくらなんでも殴りすぎだろう、と思うぐらい殴っていた。こんなに感情が露わな小津映画も珍しい。