大澤真幸『恋愛の不可能性について』

大澤真幸『恋愛の不可能性について』ちくま学芸文庫、2005年12月
タイトルだけを見ると、恋愛論のような印象を受けるが、恋愛について論じているのは第一章だけで、しかもそれは言語哲学的な内容だった。言語哲学の議論自体は面白い(非常に難解だが)。恋愛のほかには、貨幣論があり、ベケット論があり、「美を完結させる乱調」というタイトルの数学と社会学に関する論があり(これは最近出た本のタイトルに近い)、また否定神学や合理性に関する論もあり、最後にメディア論(身体論)が収められている。どの章も内容が難しく、理解するのにかなり苦労した。それなので、本書に収められた各論の内容をきちんと理解したという自信はないが、本書全体を通じて「他者」という存在が重要な鍵を握っていることだけは感じ取ることができた(これだけでは、本書を読んだ意味はないけれど)。

恋愛の不可能性について (ちくま学芸文庫)

恋愛の不可能性について (ちくま学芸文庫)