鈴木謙介『カーニヴァル化する社会』

鈴木謙介カーニヴァル化する社会講談社現代新書、2005年5月
「データベース」って何?というのは読了後にまず思い浮かんだこと。この概念をどのレベルで使っているのかがはっきりないので、後半部分の議論の抽象化のところが理解困難な状況になっている。つまり、「データベース」という概念を、1)言葉の比喩、社会の何らかの現象を象徴するものとして使っているのか。あるいは、2)文字通りというか実体的に存在するものとして、すなわち何かの情報を集積しそれを機械的な操作で用いるものということを想定して、著者の理論で用いているのか。この二つの区別がきちんとなされていないのではないか。
2)のレベルで考えると、どうしても終章の議論は空論にしか聞こえてこない。1)のレベルであれば、その具体的なものは何かが分からない。というわけで、どちらにせよ、本書のキーワードになる「データベース」を著者がどのような意味で使っているのかをはっきりさせないと、とくに終章は読者が理解困難に陥ると思う。
というわけで、終章の理論化はまだスケッチの段階を出ておらず、粗い議論となってしまったことが惜しい。そこに至るまでの議論は、手堅いものがあり説得力もあった。だが総じて議論の理論化、抽象化の段階になると著者の甘さが露呈してしまっていると思う。

カーニヴァル化する社会 (講談社現代新書)

カーニヴァル化する社会 (講談社現代新書)