野矢茂樹『無限論の教室』

野矢茂樹『無限論の教室』講談社現代新書、1998年9月
とても面白い本だと思う。私の中では、名著に分類したい。本書の面白さをどう説明すればいいか悩む。私が野暮な説明をしたら、本書の魅力が失われてしまうのではないか、と余計な心配をしてしまう。
本書は無限集合論を扱っている。数学の問題でもあるのだけど、本書は数式を可能なかぎり使わずに説明していくので、数式が苦手な私でも読み通すことができた。カントールからラッセルへ展開し、最後にゲーデル不完全性定理に至る。ゲーデル不完全性定理は、現代思想でも人気のあったものだけど、あらためてその中身を知ることができる。数学の本も読んでみようかなという気持になる。たぶん、読まないかもしれないけど。
野矢氏は、本書の精神的背景はウィトゲンシュタインにあると「あとがき」で書いている。私はウィトゲンシュタインの熱心な読者じゃないので、どこにどのように本書に現れているのか分からない。ウィトゲンシュタインの本を読んで、探ってみようか。
というのも、今度はちくま学芸文庫から『論理哲学論考』(ISBN:4480089209)が出るというのだ。野矢氏の『論理哲学論考』の訳も岩波文庫から出ているけれど、なぜか『論理哲学論考』だけはいろんな出版社から出ていて面白い。私は内容は理解できないけれど、『論理哲学論考』の書き方にはすごく魅力を感じていて好きな哲学書の一つとなっている。ウィトゲンシュタインのファンなら必携の本だと思う。無人島に一冊だけ本を持って行くなら、『論理哲学論考』かもしれない。

無限論の教室 (講談社現代新書)

無限論の教室 (講談社現代新書)