岡田温司『マグダラのマリア』

岡田温司マグダラのマリア エロスとアガペーの聖女』中公新書、2005年1月
何気なく読み始めたが、かなり面白いテーマの研究だった。マグダラのマリアという西洋というかキリスト教の世界でも、聖母マリアと並んでもっとも有名な女性が、西洋の絵画や文学のなかでどのようなイメージとして表象されてきたのかということを検討している。イタリアを中心に、原始キリスト教からバロックまでが本書の対象となっている。
マグダラのマリアとは、キリストによって回心をした女性だが、そのイメージは聖女であり娼婦。つまり聖と俗の両極のイメージを持つ女性である。キリストの足元にすがりつき、その長い豊かな髪で、キリストの足を拭っている、そんなイメージを思い浮かべることができるのではないか。
しかしながら、表象の歴史をたどっていくと、さまざまな姿で現れていることが分かる。その表象された姿は、同時に「女性」の、あるいは「娼婦」のイメージの歴史とも言えそうだ。ヨーロッパにおける「女性」の位置や、娼婦と修道院の関係など興味深い分析が多い。

マグダラのマリア―エロスとアガペーの聖女 (中公新書)

マグダラのマリア―エロスとアガペーの聖女 (中公新書)