本多勝一『中学生からの作文技術』

◆本多勝一『中学生からの作文技術』朝日新聞社、2004年10月 作文というより文章の技術を説いた本だ。中学生からとあるけれど、中身はかなり難しいと思う。社会人向けの本ではないだろうか。 本書で述べられているテクニックは、割とシンプルで実践的。納得す…

8月の読了本

・A・W・コーンハウザー(山口栄一訳)『大学で勉強する方法』玉川大学出版部、1995年9月 →ごく一般的な勉強法。特別な勉強法ではなく、やはり昔ながらの地味な勉強法がよいのかもしれない。 ・池谷裕二『進化しすぎた脳』講談社、2007年1月 →面白い。脳は正…

宮台真司『制服少女たちの選択 After 10 Years』

◆宮台真司『制服少女たちの選択 After 10 Years』朝日文庫、2006年12月 久しぶりに読んでみたが、今読んでも面白いことがたくさん書かれてある。特に6章以降の、新人類とオタクの分析は必読。 文庫本には、特別収録として圓田浩二との対談が収められているが…

コミュニケーション力

「博士」も定職が見つけられず…ポストドクター1万5000人超(sankei web) この前もNHKのクローズアップ現代でポスドクの就職難について取り上げられていたが、この記事によるとそのポスドクは増え続け、15000人を越したという。 こういうとき、よく言わ…

大東和重『文学の誕生 藤村から漱石へ』

◆大東和重『文学の誕生 藤村から漱石へ』講談社、2006年12月 本書は日露戦争後の文壇が分析される。 論じられる年代は、明治39年から41年にかけて。期間は短いが、この時期は近代文学にとって極めて重要だ。なぜならこの時期に、<文学>概念が大きく変化し…

田中貴子『検定絶対不合格教科書 古文』

◆田中貴子『検定絶対不合格教科書 古文』朝日新聞社、2007年3月 国語の教科書に対する批判は、石原千秋をはじめいくつかあるが、本書は古典の分野に的を絞り、古典文学教育の問題点を指摘しつつ、独自の教材を提示する。 教材のセレクションは、なかなか興味…

人間的な、余りに人間的な

人間的な、余りに人間的なものは大抵は確かに動物的である。 ――芥川龍之介「侏儒の言葉」

歴史は繰り返す

最近、もう一度一から近代文学の歴史を一から勉強し直そうと、文学史の教科書とか読んでいる。歴史は繰り返すとは、よく言われることだが、勉強してみるとやはりこれは真実をついていて、人間の面白さを感じる。 今から100年前というと1907年になるが、これ…

中沢新一『人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ?』

◆中沢新一『人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ?』講談社、2002年1月 神話学入門ということで、世界各地に分布するシンデレラの物語などを取り上げて、その意味を読み解いていくのは、かなり面白い。 最後に神話と現実について語っているが、宗教がときに現…

野矢茂樹『入門!論理学』

◆野矢茂樹『入門!論理学』中公新書、2006年9月 野矢氏には、『論理学』とか『論理トレーニング』など論理学についての名著があるが、本書でもまた期待を裏切らず、非常に面白くかつ内容も深い。 本書は縦書きで書かれた論理学の本である。ということは、記…

池田晶子『14歳からの哲学 考えるための教科書』

◆池田晶子『14歳からの哲学 考えるための教科書』トランスビュー、2003年3月 ずっと積ん読のまま放置してあったのだが、時間ができたので一気に読んでみた。 「哲学」という何かが、自ら考えるよりも先に存在しているわけではないのですが、哲学史や学説を覚…

知の考古学

もっぱら対立しているのは、依然として権力者(支配者)と民衆(あるいは庶民)なのだろう。 たとえば作り手を受け手の対立もその一つだ。ポストモダンは、作り手の一方的な作品支配に抵抗するきっかけになった。 あるいは、「歴史」と「記憶」の対立もある…

阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』

◆阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』新潮文庫、1984年6月 いまさらながら、ギリシア神話に興味を持った。特に西洋の文学を理解するには、ギリシア神話の知識が欠かせない。 本書は、非常に面白い。単に神話の各エピソードのあらすじを紹介しているだ…

読んでから考える

内田樹の次の文章を読んで、自分が以前書いた「素人」批判を思い出してしまった。 とにかく、こちらは素人ですから、専門家に何を言われても「あ、そうですか。すみません」でおしまいです。別にそれによって「バカ」の烙印を押されても、何の実害もありませ…

東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2』

◆東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2』講談社現代新書、2007年3月 従来の純文学を中心として文学史観を相対化するという本書の目的は、達成されていると思う。たしかに、私自身、これまでライトノベルなんて類型的で平板な物語でし…

ショック…

許せる? 許せない? 新入社員のあきれた言動 新入社員のあきれた行動が紹介されていて、これはおもしろい記事。将来日系企業に就職する学生もいるから、学生にこういう行動は嫌われるのだよと教えておきたい内容。 それにしても、個人的にはこの調査結果に…

先にやることがあるのでは

留学生受け入れ拡大、態勢整備で一致…教育再生会議(YOMIURI ONLINE) 国際競争力を高めるために、留学生を100万人にまで拡大するというニュース。日本の留学を選択しやすいように奨学金などを充実させていくなど、いくつかの提案がなされている。 留学生の…

川上弘美『センセイの鞄』

◆川上弘美『センセイの鞄』文春文庫、2004年9月 駅前の居酒屋で出会って以来、ツキコとセンセイの交流がはじまる。年の離れた二人だが、一緒に飲むようになって、徐々に親密になっていく。ツキコはセンセイのことを強く思い始めるが、センセイは逃げた妻のこ…

手を動かす

茂木健一郎のブログに、「忘れること」の効用として、「課題になっていることがあったら、今までの経緯は無視して、とっとと始めろ、ということを自分に課すことができるという点*1」を挙げている。 このことは、たしかにその通りで非常に大切なことだと思う…

選挙戦略として「女性」の立場は有効なのか

統一地方選挙がはじまった。 選挙の度に疑問に思うことがある。女性の立候補は、しばしば「女性」の立場を強調する。果たして、選挙戦略として、女性が「女性」の立場を強調するのはどれほど有効なのだろうか。 そもそも、男性だから「男性」の立場で、女性…

熱心

入学前補習、大学で当たり前に 中学校レベルも(『asahi.com』2007年04月07日) 大学で、入学前に補習授業をやるのが今や当たり前になってきたというニュース。要するに、「学力低下」という危機から、大学が始めたことなのだが、補習を真剣に受けている学生…

斎藤英喜『読み替えられた日本神話』

◆斎藤英喜『読み替えられた日本神話』講談社現代新書、2006年12月 日本神話が、各時代の人々がどのように神話を読み、そこから神話をどのように読み替えてきたのかをたどる。 いわゆる「国民国家」批判の類の論文にありがちなタイトルなので、あまり期待せず…

池田晶子『14歳の君へ』

◆池田晶子『14歳の君へ どう考えどう生きるか』毎日新聞社、2006年12月 基本的にネガティヴ思考で、自分自身を悲観的に見る傾向があるので、たとえば「プラス思考で生きよう」とか「自分を信じよう」という言葉に違和感を覚える。 もちろん、マイナス思考よ…

中島らも『ますます明るい悩み相談』

◆中島らも『ますます明るい悩み相談』朝日文芸文庫、1996年8月 ストレス発散になるような本が読みたいと思って日本から持ってきた本だが、やっぱりこれは面白い。どうして、くすっと笑えるような面白い解答ができるのだろうなあ、なんて悩んでしまう。 本書…

江国香織『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』

◆江国香織『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』集英社文庫、2005年2月 今、女性作家の短編小説を探しているので、この短編集を読んでみた。江国作品ははじめて読んでみたが、これは自分とは合わない世界の物語だなと思った。 ほとんどの作品の登場人物…

綿矢りさ『夢を与える』

◆綿矢りさ『夢を与える』河出書房新社、2007年2月 前2作とすっかり雰囲気が変わっていたのに驚いた。いかにも「小説」らしくなっていて、それは作者の技術が良くなったのかもしれないが、逆に言えば「小説」という枠の中にきれいに収まってしまって、『イン…

高橋源一郎『ニッポンの小説』

◆高橋源一郎『ニッポンの小説 百年の孤独』文藝春秋、2007年1月 けっこうボリュームのある本なので、読み終えるのに時間がかかるかなと思ったが、いざ読み始めると面白くて一気に全部読んでしまった。保坂和志にせよ、この高橋源一郎にせよ、最近、小説家に…

左近司祥子『哲学のことば』

◆左近司祥子『哲学のことば』岩波ジュニア新書、2007年2月 全8章で構成されている。取り上げられているテーマは、たとえば人間は何か、愛、友情、生と死、私とは何か、といったもの。そして、哲学者の言葉をいくつか引用しながら、これらのテーマについて論…

パオロ・マッツァリーノ『つっこみ力』

◆パオロ・マッツァリーノ『つっこみ力』ちくま新書、2007年2月 けっこう面白い。批判や否定よりも「つっこみ力」の必要性を説く。 批判や否定の言辞は、相手の間違いを指摘してつぶしていくだけだ。つっこみはそうではない。つまらない「ボケ」も、つっこみ…

「恵まれた」人間は、社会批判をする資格がないのだろうか

大正時代の有島武郎とか、その周辺の文学者、すこしあとだと太宰治のような文学者たちの苦悩は、現代でもすこしも解決されていないのだなあと思う。 たとえば、幸か不幸か「恵まれた」*1環境にいる人がいるとする。そして、彼らがいくらプロレタリアの階層の…