丸谷才一『日本文学史早わかり』

丸谷才一『日本文学史早わかり』講談社文芸文庫、2004年8月
本書の特徴は、詞華集による文学史ということである。丸谷は、従来の文学史が西洋19世紀の個人主義的な文学史であったことに不満を感じ、勅撰集に着目した。それは個人主義によって生まれたものではなく、共同体的性格を持っているからだ。
たしかに、本書の方法は専門家から見れば、ツッコミどころがたくさんあるのだろう。しかし、本書が丸谷の小説家としての位置を確認するために書かれたものなのだから、些末な欠点は目を瞑って、読み物としての「文学史」として楽しむのが一番よいと思う。

日本文学史早わかり (講談社文芸文庫)

日本文学史早わかり (講談社文芸文庫)