2007-01-01から1年間の記事一覧

阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』

◆阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』新潮文庫、1984年6月 いまさらながら、ギリシア神話に興味を持った。特に西洋の文学を理解するには、ギリシア神話の知識が欠かせない。 本書は、非常に面白い。単に神話の各エピソードのあらすじを紹介しているだ…

読んでから考える

内田樹の次の文章を読んで、自分が以前書いた「素人」批判を思い出してしまった。 とにかく、こちらは素人ですから、専門家に何を言われても「あ、そうですか。すみません」でおしまいです。別にそれによって「バカ」の烙印を押されても、何の実害もありませ…

東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2』

◆東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2』講談社現代新書、2007年3月 従来の純文学を中心として文学史観を相対化するという本書の目的は、達成されていると思う。たしかに、私自身、これまでライトノベルなんて類型的で平板な物語でし…

ショック…

許せる? 許せない? 新入社員のあきれた言動 新入社員のあきれた行動が紹介されていて、これはおもしろい記事。将来日系企業に就職する学生もいるから、学生にこういう行動は嫌われるのだよと教えておきたい内容。 それにしても、個人的にはこの調査結果に…

先にやることがあるのでは

留学生受け入れ拡大、態勢整備で一致…教育再生会議(YOMIURI ONLINE) 国際競争力を高めるために、留学生を100万人にまで拡大するというニュース。日本の留学を選択しやすいように奨学金などを充実させていくなど、いくつかの提案がなされている。 留学生の…

川上弘美『センセイの鞄』

◆川上弘美『センセイの鞄』文春文庫、2004年9月 駅前の居酒屋で出会って以来、ツキコとセンセイの交流がはじまる。年の離れた二人だが、一緒に飲むようになって、徐々に親密になっていく。ツキコはセンセイのことを強く思い始めるが、センセイは逃げた妻のこ…

手を動かす

茂木健一郎のブログに、「忘れること」の効用として、「課題になっていることがあったら、今までの経緯は無視して、とっとと始めろ、ということを自分に課すことができるという点*1」を挙げている。 このことは、たしかにその通りで非常に大切なことだと思う…

選挙戦略として「女性」の立場は有効なのか

統一地方選挙がはじまった。 選挙の度に疑問に思うことがある。女性の立候補は、しばしば「女性」の立場を強調する。果たして、選挙戦略として、女性が「女性」の立場を強調するのはどれほど有効なのだろうか。 そもそも、男性だから「男性」の立場で、女性…

熱心

入学前補習、大学で当たり前に 中学校レベルも(『asahi.com』2007年04月07日) 大学で、入学前に補習授業をやるのが今や当たり前になってきたというニュース。要するに、「学力低下」という危機から、大学が始めたことなのだが、補習を真剣に受けている学生…

斎藤英喜『読み替えられた日本神話』

◆斎藤英喜『読み替えられた日本神話』講談社現代新書、2006年12月 日本神話が、各時代の人々がどのように神話を読み、そこから神話をどのように読み替えてきたのかをたどる。 いわゆる「国民国家」批判の類の論文にありがちなタイトルなので、あまり期待せず…

池田晶子『14歳の君へ』

◆池田晶子『14歳の君へ どう考えどう生きるか』毎日新聞社、2006年12月 基本的にネガティヴ思考で、自分自身を悲観的に見る傾向があるので、たとえば「プラス思考で生きよう」とか「自分を信じよう」という言葉に違和感を覚える。 もちろん、マイナス思考よ…

中島らも『ますます明るい悩み相談』

◆中島らも『ますます明るい悩み相談』朝日文芸文庫、1996年8月 ストレス発散になるような本が読みたいと思って日本から持ってきた本だが、やっぱりこれは面白い。どうして、くすっと笑えるような面白い解答ができるのだろうなあ、なんて悩んでしまう。 本書…

江国香織『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』

◆江国香織『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』集英社文庫、2005年2月 今、女性作家の短編小説を探しているので、この短編集を読んでみた。江国作品ははじめて読んでみたが、これは自分とは合わない世界の物語だなと思った。 ほとんどの作品の登場人物…

綿矢りさ『夢を与える』

◆綿矢りさ『夢を与える』河出書房新社、2007年2月 前2作とすっかり雰囲気が変わっていたのに驚いた。いかにも「小説」らしくなっていて、それは作者の技術が良くなったのかもしれないが、逆に言えば「小説」という枠の中にきれいに収まってしまって、『イン…

高橋源一郎『ニッポンの小説』

◆高橋源一郎『ニッポンの小説 百年の孤独』文藝春秋、2007年1月 けっこうボリュームのある本なので、読み終えるのに時間がかかるかなと思ったが、いざ読み始めると面白くて一気に全部読んでしまった。保坂和志にせよ、この高橋源一郎にせよ、最近、小説家に…

左近司祥子『哲学のことば』

◆左近司祥子『哲学のことば』岩波ジュニア新書、2007年2月 全8章で構成されている。取り上げられているテーマは、たとえば人間は何か、愛、友情、生と死、私とは何か、といったもの。そして、哲学者の言葉をいくつか引用しながら、これらのテーマについて論…

パオロ・マッツァリーノ『つっこみ力』

◆パオロ・マッツァリーノ『つっこみ力』ちくま新書、2007年2月 けっこう面白い。批判や否定よりも「つっこみ力」の必要性を説く。 批判や否定の言辞は、相手の間違いを指摘してつぶしていくだけだ。つっこみはそうではない。つまらない「ボケ」も、つっこみ…

「恵まれた」人間は、社会批判をする資格がないのだろうか

大正時代の有島武郎とか、その周辺の文学者、すこしあとだと太宰治のような文学者たちの苦悩は、現代でもすこしも解決されていないのだなあと思う。 たとえば、幸か不幸か「恵まれた」*1環境にいる人がいるとする。そして、彼らがいくらプロレタリアの階層の…

細川英雄『日本語教育は何をめざすか』

◆細川英雄『日本語教育は何をめざすか 言語文化活動の理論と実践』明石書店、2002年1月 日本語教育、特に「日本事情」の授業に関する論考。理論的な著作。 ことばと文化をどのように日本語教育のなかに位置づけるか。いろいろと刺激的な内容が書いてあり、参…

小西甚一『日本文学史』

◆小西甚一『日本文学史』講談社学術文庫、1993年9月 きわめて個性的な日本文学史で、日本文学の有名作品を解説したような教科書的な本とはことなり、本書では著者の文学史観に沿って語られている。 個性的なものの一つに、時代区分がある。たいてい日本文学…

愚痴

日本の大学は卒業生や修了生の追跡調査に必死だ。私のところにも、院を修了したときから、進路調査の依頼が何度かきた。 要するに、特に修了生の進路を大学側の業績として報告して、いかにすばらしい教育を行っているかを証明しないといけないのだろうが、そ…

きびしいが

なんともつらいのだが、私もこのお金を返済しなければ… 奨学金返還、督促を強化 法的措置予告1万件 督促が来ないように気をつけよう。

坪内逍遙『当世書生気質』

◆坪内逍遙『当世書生気質』岩波文庫、2006年4月 はじめは少々読みにくい文章だが、慣れてきて語り手の調子に乗っていくと、非常に面白い。物語の途中で、本筋に関係あるのかなと思うような、書生の会話が描かれてたりして、現代の小説は趣が異なるが、それも…

細川英雄『日本語教育と日本事情』

◆細川英雄『日本語教育と日本事情−異文化を越える−』明石書店、1999年10月 日本語教育には、「日本事情」とかそれに類した名称の授業がある。要するに、言葉だけ身につけても、その言葉の背景となる社会や文化を知らないと、言語をうまく運用することができ…

金水敏『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』

◆金水敏『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』岩波書店、2003年1月 ずっと積ん読状態にあったのだが、お正月の休みの間に一気に読んだ。 「役割語」とは何か。定義がなされているので、それを引用してみる。 ある特定の言葉づかい(語彙・語法・言い回し・イン…

村上龍『日本経済に関する7年間の疑問』

◆村上龍『日本経済に関する7年間の疑問』NHK出版、2006年11月 メールマガジン「JMM」に載せられた村上龍のエッセイを集めた本。政治や経済について語っているのだが、全体に流れているのは大手既成メディアに対する批判だ。景気について語っていても、日本の…

藤原和博・宮台真司『人生の教科書[よのなかのルール]』

◆藤原和博・宮台真司『人生の教科書[よのなかのルール]』ちくま文庫、2005年5月 なかなかよくできた「教科書」。日本の社会の仕組みあるいは「ルール」がよくわかる。概説的ではなく、具体例に沿って解説しているところが、学校の教科書と異なるところ。 …

藤井貞和『古典の読み方』

◆藤井貞和『古典の読み方』講談社学術文庫、1998年2月 藤井氏には、岩波のジュニア新書にも古典入門の本があるが、そちらが高校生向けに主に古典文法を説明しているのに対し、こちらの本は古典を文学としてどのように読んだらよいのかを説明している。古典を…

阿部和重『ミステリアスセッティング』

◆阿部和重『ミステリアスセッティング』朝日新聞社、2006年11月 作品の発表媒体を意識した物語になっている。物語の語り手としての円熟味が増していると感じるが、たとえば『シンセミア』やそれ以前の作品に見られたような物語のデタラメさがやや薄くなって…