宮台真司・石原英樹・大塚明子『増補 サブカルチャー神話解体』

宮台真司・石原英樹・大塚明子『増補 サブカルチャー神話解体――少女・音楽・マンガ・性の変容と現在』ちくま文庫、2007年2月
文庫化を機に再読してみる。今読んでみても、かなり面白い内容。各メディアにおけるコード分析は切れ味が鋭い。上野千鶴子による解説も一読の価値あり。
本論の一番最後にこう書かれている。

関係の偶発性の処理能力、環境複雑性の処理能力を鍛え上げるのに役立つコミュニケーション空間や、それによって実際鍛えられた感覚が上昇した時代として、「70年代半ば」という時代は記憶されるべきだろうと。確かにそれはスノビッシュなイヤラシイ空間だったけれど、いろいろなものを生み出す原動力になったと。歴史的にそうだったというだけでなく、論理的にそれを可能にするメカニズムがあったし、僕らはそれを徹底的に評価したいんです。(p.500)

なるほどなと思う。本書はサブカルチャーに関して、膨大なデータの収集とその緻密な分析がウリなのだが、それは「70年代半ば」という時代を再評価するためにあったのか。時代論といえば、たとえば60年代論と80年代論は熱い。最近では90年代論などがある。そのなかでも地味な位置づけがなされることが多い「70年代」。単なるシラけムードの漂っていた退屈な時代では無かったのだ。そこには、偶発的とはいえ、80年代、90年代へと続いていくルーツが含まれていたのであった。
本書は、70年代論として今後も重要なものとなるのではないか。