井上ひさしほか文学の蔵編『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』

井上ひさしほか文学の蔵編『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』新潮文庫、2002年1月
一関で行われた作文教室の記録。

 作文の秘訣を一言でいえば、自分にしか書けないことを、だれにでもわかる文章で書くということだけなんですね。

たしかに、こういう文章が書けるようになりたいものである。これがなかなか難しい。
こういう文章を書くために、井上ひさしが講義を通じて、いろいろなアドバイスをしている。井上によると、「優れた文章書きは、なるべく小さく千切ったものを、相手に次々に提供していく」という。本の中では、漱石の文章が触れられていたが、たしかに漱石の作品の冒頭は短い。『草枕』では、「山路を登りながら、かう考へた。/智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。」とあり、短い文章をたたみかけるように続く。川端康成の『雪国』は、「国境を越えると、雪国だった。」という有名な一文で始まるが、これも何の迷いもなく、ズバッと主題に入っていく。
井上は「「いきなり核心から入る」ことが大事なんです」と指摘している。これはまったくその通りだ。どの文章が必要で、どれが不要か。この見極めが大切なのである。一番センスの問われるところだ。