大塚英志『初心者のための「文学」』

◆大塚英志『初心者のための「文学」』角川文庫、2008年7月 ぼくが先に中上ら八〇年代文学は「ガンダム」のようだ、と記したのは「ガンダム」もまた八〇年代に「サーガ」化したからです。 中上の熊野という現実の土地の上に築きあげた「神話的世界」とは、「…

東浩紀+大塚英志『リアルのゆくえ――おたく/オタクはどう生きるか』

◆東浩紀+大塚英志『リアルのゆくえ――おたく/オタクはどう生きるか』講談社現代新書、2008年8月 両者の言い分はなんとなくわかるけれど、なんだかなあという感じ。無駄に対立しているような気がしてならない。対立のための対立というか。そういう批評なんだ…

水月昭道『高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院』

◆『高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院』光文社新書、2007年10月 まあまあ面白い内容だけど、買って読むほどでもなかったなあ。高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)作者: 水月昭道出版社/メー…

蓮實重彦『「赤」の誘惑――フィクション論序説』

◆蓮實重彦『「赤」の誘惑――フィクション論序説』新潮社、2007年3月 難しすぎて、ほとんど理解できず。「赤」の誘惑―フィクション論序説作者: 蓮實重彦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/03/01メディア: 単行本 クリック: 37回この商品を含むブログ (48件)…

荒木浩『日本文学 二重の顔 〈成る〉ことの詩学へ』

◆荒木浩『日本文学 二重の顔 〈成る〉ことの詩学へ』大阪大学出版会、2007年4月 エンデが言うように、すぐれた著作がなされるためには、〈外部〉の本質的な「内面」化が必要だ。たとえていえばそれは、ペルソナと顔が融合して、新しい顔、新しいわたしが誕生…

8月に読んだ本

◆福岡伸一『生物と無生物のあいだ』講談社現代新書、2007年5月 ◆定延利之『煩悩の文法――体験を語りたがる人びとの欲望が日本語の文法システムをゆさぶる話』ちくま新書、2008年7月 たとえば談話語用論の考えによれば、文法はまさに会話から生まれ出るもので…

永井均『子どものための哲学対話』

◆永井均『子どものための哲学対話』講談社、1997年7月 語り口は子ども向けではあるが、内容は大人が読んでも十分面白い。「学校」的な道徳では決して語られないような重要なことが述べられている。 「友だちは必要か?」について、こう述べている。 人間は自…

村上春樹『アフターダーク』

◆村上春樹『アフターダーク』講談社文庫、2006年9月 面白い小説。 都会のある一夜が舞台。ファミレスで一人で本を読んでいる女と彼女に話しかける男。ラブホテルでのちょっとした事件。怪しい組織。深夜に一人残業する男。そして、これらの登場人物たちを見…

村上春樹『中国行きのスロウ・ボート』

◆村上春樹『中国行きのスロウ・ボート』中公文庫、1997年4月 中国行きのスロウ・ボート 貧乏な叔母さんの話 ニューヨーク炭鉱の悲劇 カンガルー通信 午後の最後の芝生 土の中の彼女の小さな犬 シドニーのグリーン・ストリート どの作品も味わい深いが、「午…

三浦佑之『日本古代文学入門』

◆三浦佑之『日本古代文学入門』幻冬舎、2006年9月 面白い本。エロ・グロ・ナンセンスなテーマや歴史的事件、異界のテーマの物語が多数紹介される。紹介されている物語がどれも面白い。物語なので、実際に起きた事件や出来事が語られているとは一概には言えな…

村上春樹『レキシントンの幽霊』

◆村上春樹『レキシントンの幽霊』文春文庫、1999年10月 短篇集。 レキシントンの幽霊 緑色の獣 沈黙 氷男 トニー滝谷 七番目の男 めくらやなぎと、眠る女 最近、暇になると村上春樹の小説を読んでしまう。手もとにこれぐらいしか小説がないのが原因なのだが…

アニー・ベイビー『さよなら、ビビアン』

◆アニー・ベイビー『さよなら、ビビアン』小学館、2007年7月 上海あたり都会を舞台にした刹那的な男女の関係が描かれる。都会の孤独や絶望的な愛は、読んでいて暗い気分になっていく。自分の中にある中国(人)のイメージとかなりズレる。そのズレが面白いと…

真銅正宏『小説の方法 ポストモダン文学講義』

◆真銅正宏『小説の方法 ポストモダン文学講義』萌書房、2007年4月 文学理論の入門書。ある程度文学理論に馴染んでいないと、少々むずかしいかもしれないが、面白い内容になっている。様々な理論の紹介だけでなく、理論を基にしながら、「小説とは何か」とい…

定延利之『よくわかる言語学』

◆定延利之『よくわかる言語学』アルク、1999年11月 言語学は、使われている用語がなかなか理解できなくて、これまで敬遠していた。なので、言語学の面白さを知らなかったのだが、本書のおかげでけっこう面白い学問であることがわかった。 入門書として非常に…

蒲松齢(立間祥介訳)『聊斎志異』

◆蒲松齢(立間祥介訳)『聊斎志異』岩波書店、2000年6月 岩波少年文庫のものなので、文章は中学生向けになっている。そのおかげで、かなり読みやすくてよい。 清の蒲松齢によって書かれた『聊斎志異』。不思議な物語が集められたものである。幽霊や妖怪が出…

酒井聡樹『これからレポート・卒論を書く若者のために』

◆酒井聡樹『これからレポート・卒論を書く若者のために』共立出版、2007年5月 以前『これから論文を書く若者のために』を読んだことがある。とても良い本だった。若手研究者のための論文執筆法を説いたものだ。本書は、その手前の若者が対象である。これから…

香西秀信・中嶋香緒里『レトリック式作文練習法』

◆香西秀信・中嶋香緒里『レトリック式作文練習法―古代ローマの少年はどのようにして文章の書き方を学んだか―』明治図書、2004年11月 「プロギュムナスマタ」という作文・話し方の教育法を、現代の作文教育に応用する試み。本書によると、「プロギュムナスマ…

二階堂善弘『中国妖怪伝』

◆二階堂善弘『中国妖怪伝 怪しきものたちの系譜』平凡社、2003年3月 当然といえば当然なのかもしれないが、中国も日本に負けず劣らず妖怪がたくさんいる。妖怪と幽霊の話は、どの国のものでもおもしろい。怪しい話にこそ、人間の想像力が発揮される。 本書の…

福澤一吉『議論のレッスン』

◆福澤一吉『議論のレッスン』日本放送出版協会、2002年4月 非常に良い。「議論」とはどういうものなのか、何が必要なのか。難しくなりがちな説明を要領良くまとめてあり、理解しやすい。 この本も、大学に入ったばかりの頃に読んでおくと、その後の研究生活…

吉田新一郎『効果10倍の<教える>技術 授業から企業研修まで』

◆吉田新一郎『効果10倍の<教える>技術 授業から企業研修まで』PHP新書、2006年3月 良い授業・研修とは何か。従来の教育では、学んだことがなかなか身につかないことを指摘し、いかに学びの場を変えていくか論じていく。 前半は、従来の教育(悪)/新しい…

仲正昌樹『知識だけあるバカになるな!』

◆仲正昌樹『知識だけあるバカになるな! 何も信じられない世界で生き抜く方法』大和書房、2008年2月 大学に入ったばかりの頃に読むと非常に役に立つ本だと思う。 第一章では、「正しく疑う」ことの難しさと方法について語られている。大学で学ぶとはどういう…

小松和彦『妖怪文化入門』

◆小松和彦『妖怪文化入門』せりか書房、2006年3月 本書は、妖怪について書かれた文章を集めたものなので、内容的には『妖怪学新考』と重なる。その点では物足りない。しかし、これまでの妖怪研究の流れについて、小松和彦が要領よく整理してまとめているのは…

村上春樹『蛍・納屋を焼く・その他の短編』

◆村上春樹『蛍・納屋を焼く・その他の短編』新潮文庫、1987年9月 村上春樹の短編小説は面白い。これは意外だった。やはり食わず嫌いは良くない。なんでも読んでみることが大切だ。 あらためて指摘するまでもないが、この短編集を読んでいくと、うまく話すこ…

小松和彦『妖怪学新考 妖怪からみる日本人の心』

◆小松和彦『妖怪学新考 妖怪からみる日本人の心』洋泉社、2007年7月 妖怪学の事始めとして重要な本。妖怪とは何か、という興味深い主張がなされている。日本人が妖怪とどのようにつきあってきたのか、そこから日本文化のあり方を導き出す手腕に瞠目する。 本…

村上春樹『はじめての文学 村上春樹』

◆村上春樹『はじめての文学 村上春樹』文藝春秋、2006年12月 若い人のための短編小説集として編まれた。「カンガルー日和」や「かえるくん、東京を救う」、そしてかなり印象深い作品である「沈黙」などが収められている。 本書に収められている短編は、「恐…

井桁貞義『文学理論への招待』

◆井桁貞義『文学理論への招待 “オンデマンド授業”の実際と大学授業の新しい可能性』早稲田大学文学部、2001年12月 オンデマンドで行われた授業の記録。新しい授業の可能性として、オンデマンドで文学の授業を行うこの試みは、本書を読んだ限りではおもしろそ…

中条省平『文章読本 文豪に学ぶテクニック講座』

◆中条省平『文章読本 文豪に学ぶテクニック講座』中公文庫、2003年10月 「文章読本」となっているが、名文の書き方を述べるのではない。日本文学を題材に、さまざまな小説から、どうしてその文章が「名文」なのか詳細に分析した本である。 この分析が見事だ…

仲正昌樹『集中講義! 日本の現代思想 ポストモダンとは何だったのか』

◆仲正昌樹『集中講義! 日本の現代思想 ポストモダンとは何だったのか』日本放送出版協会、2006年11月 非常にわかりやすく整理されていて有益。現代思想の要点と流れを理解できる。 読んでいて思ったのは、全共闘崩れにしてもニュー・アカ崩れでも、当時はま…

中条省平『小説の解剖学』

◆中条省平『小説の解剖学』ちくま文庫、2002年9月 これは小説家を目指す人たちのために、小説のさまざまな技法を講義したものである。 小説がどのように書かれているのか知ることは、小説を読む際にも必要だと思う。だから、本書は小説家志望者のみならず、…

小野田博一『論理力を強くする 考える力を磨くために』

◆小野田博一『論理力を強くする 考える力を磨くために』講談社、2006年4月 論理パズルの問題集。解説が少ないのが惜しい。論理力を強くする―考える力を磨くために (ブルーバックス)作者: 小野田博一出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/04/21メディア: 新書…