井桁貞義『文学理論への招待』

◆井桁貞義『文学理論への招待 “オンデマンド授業”の実際と大学授業の新しい可能性』早稲田大学文学部、2001年12月
オンデマンドで行われた授業の記録。新しい授業の可能性として、オンデマンドで文学の授業を行うこの試みは、本書を読んだ限りではおもしろそうだった。
授業の中身も興味深い。村上春樹を使った物語論や、さまざまな分析法によるドストエフスキー罪と罰』の読解など参考になることが多い。
本書のなかで、さまざまな小説家が『罪と罰』との対話を行いながら創作していることが紹介されていたが、その影響力の強さは計り知れないものがある。本書を読み終えた直後、太宰の『人間失格』を読んでみたが、太宰が一生懸命に『罪と罰』をやろうとしていて、その姿がなんだか痛々しかった。