香西秀信・中嶋香緒里『レトリック式作文練習法』

香西秀信・中嶋香緒里『レトリック式作文練習法―古代ローマの少年はどのようにして文章の書き方を学んだか―』明治図書、2004年11月
「プロギュムナスマタ」という作文・話し方の教育法を、現代の作文教育に応用する試み。本書によると、「プロギュムナスマタ」というのは紀元前4世紀ごろには現れて、西洋では17世紀頃まで続けられていたものだという。「プロギュムナスマタ」が長く続けられていた理由として、生徒に「型」を与えたということが指摘されている。本書も、プロギュムナスマタを参考に、文章のひな型を与えられ、その型に沿って作文の練習が行われる。
作文の練習で、このように「型」を徹底的に身につけさせるのはとても有効な方法だと思っている。しかし、なかなかこの練習を学生にさせるのは難しい。特に、文章を書くのが好きな学生は、「型」に当てはめて文章を書くことを嫌う。文章を自由に書きたいと言うのだ。しかし、作文の添削を続けていくと、文章の型に沿って書く学生のほうが明らかに作文が上手くなっていく。
たしかに、型に沿って文章を書くのは、やってみるとかなり厄介である。そうなると、ますます学生は型に沿って書く練習を嫌がるだろう。実際、本書の中で紹介されている作文の課題も、書くのにかなり苦労しそうなものだ。作文がきらいな学生にいきなりやらせるのは少々無理があるかもしれない。とはいえ、面白い課題も出されていて、作文教育の良いヒントになった。嫌われものを賞賛する練習で、カラスやゴキブリなど、一般に嫌がられる虫や動物を賞賛する作文を書くという課題は面白い。
いかに文章の型を身につけることが大切かをしっかり納得させること。そして、シンプルで応用範囲の広い型を提示することが、作文の教育では重要になると思う。