蒲松齢(立間祥介訳)『聊斎志異』

◆蒲松齢(立間祥介訳)『聊斎志異岩波書店、2000年6月
岩波少年文庫のものなので、文章は中学生向けになっている。そのおかげで、かなり読みやすくてよい。
清の蒲松齢によって書かれた『聊斎志異』。不思議な物語が集められたものである。幽霊や妖怪が出てくるが、この本で読むとあまり怖くはない。中学生向けということもあってか、選ばれた物語に出てくる妖怪や幽霊は、たいてい人に良いことをしてくれる。それはそれで面白いのだが、他にどんな話があるのか、あるいは元の文章で読むとどんな印象を受けるのか、大変気になるところだ。
「鬼の国と竜宮城」という話は、原題は「羅刹海市」であるが、日本の浦島太郎のような話。竜宮に行った男が、そこの竜王に認められ、その娘と結婚する。で3年の月日が流れた。そして、家族が心配になった男はふるさとに戻る。しかし、一度ふるさとに戻ることを決めた男は、もうこの王女と夫婦ではいられなくなる。男の帰郷によって、二人は会えなくなってしまうという悲劇の物語になる。玉手箱は出てこないが、男は王女に一生独身でいることを約束している。夫婦の愛情物語になっているところが、浦島太郎の話との違いか。

聊斎志異 (岩波少年文庫 (507))

聊斎志異 (岩波少年文庫 (507))