荒木浩『日本文学 二重の顔 〈成る〉ことの詩学へ』

荒木浩『日本文学 二重の顔 〈成る〉ことの詩学へ』大阪大学出版会、2007年4月

 エンデが言うように、すぐれた著作がなされるためには、〈外部〉の本質的な「内面」化が必要だ。たとえていえばそれは、ペルソナと顔が融合して、新しい顔、新しいわたしが誕生するようなものだろうか。外部の外面は、もともとのあなたの顔かも知れない。直面ということばもある。あるいは外に被った仮面が、内側の顔と付着してしまうようなものかも知れない。いずれにせよ、〈外部〉は〈心〉と溶け合って〈内面化〉されないと、本当の〈わたし〉には成らない。だから「現実」をそのまま写そうとしても、ろくなものは書けないのだ。(p.272-273)

似たようなことを、茂木健一郎が「クローズアップ現代」で言っていた。茂木の場合は、もちろん「脳」を通過させることで、文章が書けるということだったが。物を書くことにおける、〈外部〉と〈内部〉のインタラクションに興味が出る。

日本文学 二重の顔 (阪大リーブル)

日本文学 二重の顔 (阪大リーブル)