今日の読了本

ロバート・R・H・アンホルト(鈴木炎/イイサン・サンディ・リー訳)『理系のための口頭発表術 聴衆を魅了する20の原則』

◆ロバート・R・H・アンホルト(鈴木炎/イイサン・サンディ・リー訳)『理系のための口頭発表術 聴衆を魅了する20の原則』講談社ブルーバックス、2008年1月 学会などにおける口頭発表で気をつけるべき事柄を取り上げている。非常に面白く読め、かつ内容も的…

猪瀬直樹『ピカレスク 太宰治伝』

◆猪瀬直樹『ピカレスク 太宰治伝』文春文庫、2007年3月 面白い。面白いのは、太宰ではなく井伏鱒二のほうだ。 太宰治の評伝なので、もちろん太宰の人生が中心に物語られていくのだが、その太宰や太宰の周辺人物たちに翻弄されていく井伏の人生。おまけに「井…

大塚英志『サブカルチャー文学論』

◆大塚英志『サブカルチャー文学論』朝日文庫、2007年2月 文庫本になったので、再読してみる。改めて読み直してみると、面白いアイデアが詰まっているなと感じる。700ページを越える一冊であるが、現代文学を考えるのに必要な本だと思う。 今回読んでみて非常…

福田眞人『結核という文化 病の比較文化史』

◆福田眞人『結核という文化 病の比較文化史』中公新書、2001年11月 人類の歴史ともにある結核。戦後、抗生物質のおかげで減少した結核であるが、近年増加傾向にあるという。人類は、この結核とどう対峙してきたのか。 結核といえば、「佳人薄命」「天才芸術…

岩間輝生・坂口浩一・佐藤和夫編『高校生のための現代思想エッセンス ちくま評論選』

◆岩間輝生・坂口浩一・佐藤和夫編『高校生のための現代思想エッセンス ちくま評論選』筑摩書房、2007年5月 「高校生のための」とタイトルにあるが、大学生が読んでも十分面白い内容になっている。最近の評論のトレンドがよくわかる。下手な解説書を読むより…

橋爪大三郎『だれが決めたの? 社会の不思議』

◆橋爪大三郎『だれが決めたの? 社会の不思議』朝日出版社、2007年10月 小学生や中学生に向けた社会学入門。テーマは、たとえば「なぜ勉強しないといけないの?」「死ぬってどういうこと?」「男と女はなぜいるの?」「戦争はなぜなくならないの?」「なぜお…

宮台真司・石原英樹・大塚明子『増補 サブカルチャー神話解体』

◆宮台真司・石原英樹・大塚明子『増補 サブカルチャー神話解体――少女・音楽・マンガ・性の変容と現在』ちくま文庫、2007年2月 文庫化を機に再読してみる。今読んでみても、かなり面白い内容。各メディアにおけるコード分析は切れ味が鋭い。上野千鶴子による…

四方田犬彦『人間を守る読書』

◆四方田犬彦『人間を守る読書』文春新書、2007年9月 比較的最近に書かれた書評などが集められている本。 こういう本を読んでいると、紹介されている本が読みたくなってくる。四方田犬彦がカバーする範囲は毎度のことながら幅広い。本書でも、たとえば『風姿…

岸本佐知子『気になる部分』

◆岸本佐知子『気になる部分』白水社、2006年5月 就寝前に、読んでいた本。 エッセイ集なので気軽に読み始めたが、内容が面白いので、なかなか寝られなくなってしまう。日常生活のささいな物事から(どうでもいいことから)、妄想の世界が広がっていく。やや…

鈴木健『究極の会議』

◆鈴木健『究極の会議』ソフトバンククリエイティブ、2007年9月 会議はよい議事録をつくるために行う、という本書の思想は面白い。 私は会議とほとんど無縁の生活をしているので、「究極の会議」を目指す必要はさしあたってはないが、本書のアイデアが言語学…

藤原和博編著『[よのなか]教科書国語 心に届く日本語』

◆藤原和博編著『[よのなか]教科書国語 心に届く日本語』新潮社、2003年1月 [よのなか]で使える国語の授業を、ということで作られた本書。中心となるのは、コミュニケーション能力である。従来の道徳的な国語の授業に変わって、[よのなか]を生き抜くのに必…

梅田卓夫『文章表現四〇〇字からのレッスン』

◆梅田卓夫『文章表現四〇〇字からのレッスン』ちくま学芸文庫、2001年2月 ちょっと期待はずれ。 著者の講義をもとにして書かれている。この類の本では、作家の名文などが例文として紹介されるが、それに対して本書では、学生たちの書いた文章を例文として示…

大屋雄裕『自由とは何か――監視社会と「個人」の消滅』

◆大屋雄裕『自由とは何か――監視社会と「個人」の消滅』ちくま新書、2007年9月 「自由な個人」をめぐって議論が展開される。 第1章と第2章は、これまでの自由論を振り返り、批判的検討を加えていく。このあたりは、多くの文献や具体例が引き出されている。割…

井上ひさしほか文学の蔵編『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』

◆井上ひさしほか文学の蔵編『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』新潮文庫、2002年1月 一関で行われた作文教室の記録。 作文の秘訣を一言でいえば、自分にしか書けないことを、だれにでもわかる文章で書くということだけなんですね。 たしかに、こうい…

渡部淳『大学生のための知のスキル 表現のスキル』

◆渡部淳『大学生のための知のスキル 表現のスキル』東京図書、2007年6月 大学生というより教師向けの本。プレゼンテーション能力をいかに育てていくか、さまざまな活動が報告されている。 ノートの取り方から、ディベート授業のアイデア、論文の執筆方法など…

島田洋七『佐賀のがばいばあちゃん』

◆島田洋七『佐賀のがばいばあちゃん』徳間文庫、2004年1月 がばいばあちゃんは、なかなかうまいことを言う。 たとえば、1や2ばかりの通知表を見て、「足したら5になる」と言い、「人生は総合力」と言い切るところなど、なるほどうまいことを言うものだと感心…

丸谷才一『日本文学史早わかり』

◆丸谷才一『日本文学史早わかり』講談社文芸文庫、2004年8月 本書の特徴は、詞華集による文学史ということである。丸谷は、従来の文学史が西洋19世紀の個人主義的な文学史であったことに不満を感じ、勅撰集に着目した。それは個人主義によって生まれたもので…

寺山修司『家出のすすめ』

◆寺山修司『家出のすすめ』角川文庫、1972年3月 「家」とは「ある」ものではなく「なる」ものだという。関係が相対的であるという考えは、今では当たり前になってしまったが、寺山の時代ではものめずらしい思想だったのだろうか。書かれた当時は、どの受容さ…

寺山修司『書を捨てよ、町へ出よう』

◆寺山修司『書を捨てよ、町へ出よう』角川文庫、1975年3月 文章がすばらしい。第2章の「きみもヤクザになれる」で、さまざまな人物を描いているが、ここは非常に読み応えがある。書を捨てよ、町へ出よう (角川文庫)作者: 寺山修司出版社/メーカー: 角川書店…

中島義道『ひとを<嫌う>ということ』

◆中島義道『ひとを<嫌う>ということ』角川文庫、2003年8月 出来れば他人から嫌われたくないし、自分も他人を嫌いたくない。しかし、どうしても「嫌いだ」と感じる人はいる。そして、人を嫌うなんて最低だと自己嫌悪に陥る。 教師という仕事をやっていると…

池上彰『池上彰の新聞勉強術』

◆池上彰『池上彰の新聞勉強術』ダイヤモンド社、2006年9月 新聞講読の授業のために、参考書として読んでみる。 新聞の構成から、言葉遣い、新聞を活用しての勉強法などが書かれていて、たいへん有益な内容。「政府首脳」とは誰のことかとか、「一両日中」「…

本多勝一『中学生からの作文技術』

◆本多勝一『中学生からの作文技術』朝日新聞社、2004年10月 作文というより文章の技術を説いた本だ。中学生からとあるけれど、中身はかなり難しいと思う。社会人向けの本ではないだろうか。 本書で述べられているテクニックは、割とシンプルで実践的。納得す…

8月の読了本

・A・W・コーンハウザー(山口栄一訳)『大学で勉強する方法』玉川大学出版部、1995年9月 →ごく一般的な勉強法。特別な勉強法ではなく、やはり昔ながらの地味な勉強法がよいのかもしれない。 ・池谷裕二『進化しすぎた脳』講談社、2007年1月 →面白い。脳は正…

宮台真司『制服少女たちの選択 After 10 Years』

◆宮台真司『制服少女たちの選択 After 10 Years』朝日文庫、2006年12月 久しぶりに読んでみたが、今読んでも面白いことがたくさん書かれてある。特に6章以降の、新人類とオタクの分析は必読。 文庫本には、特別収録として圓田浩二との対談が収められているが…

大東和重『文学の誕生 藤村から漱石へ』

◆大東和重『文学の誕生 藤村から漱石へ』講談社、2006年12月 本書は日露戦争後の文壇が分析される。 論じられる年代は、明治39年から41年にかけて。期間は短いが、この時期は近代文学にとって極めて重要だ。なぜならこの時期に、<文学>概念が大きく変化し…

田中貴子『検定絶対不合格教科書 古文』

◆田中貴子『検定絶対不合格教科書 古文』朝日新聞社、2007年3月 国語の教科書に対する批判は、石原千秋をはじめいくつかあるが、本書は古典の分野に的を絞り、古典文学教育の問題点を指摘しつつ、独自の教材を提示する。 教材のセレクションは、なかなか興味…

中沢新一『人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ?』

◆中沢新一『人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ?』講談社、2002年1月 神話学入門ということで、世界各地に分布するシンデレラの物語などを取り上げて、その意味を読み解いていくのは、かなり面白い。 最後に神話と現実について語っているが、宗教がときに現…

野矢茂樹『入門!論理学』

◆野矢茂樹『入門!論理学』中公新書、2006年9月 野矢氏には、『論理学』とか『論理トレーニング』など論理学についての名著があるが、本書でもまた期待を裏切らず、非常に面白くかつ内容も深い。 本書は縦書きで書かれた論理学の本である。ということは、記…

池田晶子『14歳からの哲学 考えるための教科書』

◆池田晶子『14歳からの哲学 考えるための教科書』トランスビュー、2003年3月 ずっと積ん読のまま放置してあったのだが、時間ができたので一気に読んでみた。 「哲学」という何かが、自ら考えるよりも先に存在しているわけではないのですが、哲学史や学説を覚…

阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』

◆阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』新潮文庫、1984年6月 いまさらながら、ギリシア神話に興味を持った。特に西洋の文学を理解するには、ギリシア神話の知識が欠かせない。 本書は、非常に面白い。単に神話の各エピソードのあらすじを紹介しているだ…