丸川哲史『日中一〇〇年史』

丸川哲史『日中一〇〇年史 二つの近代を問い直す』光文社新書、2006年1月
日・中・台の三国の近代について、知識人を通して再考する。著者は本書で「悩む能力」をキーワードにして、知識人たちの「悩み」とその苦しみを追体験するように書く。本書で取り上げられている知識人は、たとえば魯迅であり毛沢東であり、竹内好であり、丸山真男、尾崎秀実などだ。中国側の日本観、日本側の中国観がよくわかる内容となっているて、東アジアの関係を考える上で参考になる本である。
知識人を通じて、歴史とくに「近代」の「歴史」を見つめ直す仕事は大切だ。とはいえ、歴史は知識人だけのものではないので、次に必要なのはもちろん民衆というか庶民の「悩み」であろう。庶民の「悩み」がいかなるものであったかという研究も知りたい。
日・中・台、知識人と庶民等々、線の引き方によって、「近代」あるいは「歴史」の姿は変わっていく。この複雑に入り組んだ問題を、ねばり強く考える、つまり著者の言う「悩む能力」がますます重要になってくるのだろう。

日中一00年史 二つの近代を問い直す (光文社新書)

日中一00年史 二つの近代を問い直す (光文社新書)