衣笠貞之助『お琴と佐助』
◆『お琴と佐助』監督:衣笠貞之助/1961年/日本/94分
原作は、タイトルから分かるように谷崎潤一郎の『春琴抄』(ISBN:4101005044)。『春琴抄』は何度か呼んだことがある小説だが、映画を見たのはこれが初めてだ。『春琴抄』は何度か映画化されている。この衣笠貞之助のものは、3度目の映画化らしい。主演は山本富士子だ。
昨日見た『みだれ髪』の山本富士子は良いとは思わなかったけど、『春琴抄』の山本富士子はすばらしい。美しいというよりかわいらしい春琴になっていた。このイメージは谷崎の小説から受けたイメージとは異なるけれど、かわいらしい春琴というのも悪くないものだと思った。佐助に対する態度をアメとムチと言えばよいのだろうか。春琴は、佐助に厳しく当るいっぽうで、その後には佐助をいたわるやさしさもあるのだ。このアメとムチ作戦は、佐助ならずとも男は忠誠を誓ってしまうのではないか。
『春琴抄』では、佐助が自分の眼を潰してしまう場面があって、私は何度読んでもこの場面が苦手なのだけど、やはりこの場面を見て、痛々しくて見ているのが辛かった。さすがにグロテスクな映像には仕上げていないけれど、それでも針を刺すということをイメージするだけでダメなのだ。コンタクトをしている時、眼にゴミが入るとすごく痛い。まして針で刺したらその痛みは……。
ともかく、この映画は山本富士子の春琴のかわいらしさを堪能すべきなのだろう。