衣笠貞之助『みだれ髪』

◆『みだれ髪』監督:衣笠貞之助/1961年/日本/95分
原作は、泉鏡花の「三枚鏡」。この小説は、まだ読んだことがない。主演は、山本富士子勝新太郎。この前、山本富士子がヒロインの『氷壁』を見た。その時も、山本富士子は三角関係に陥って苦しんでいた。『みだれ髪』もいちおう男二人に女一人の三角関係を形成している。
この映画の監督は、衣笠貞之助だ。衣笠貞之助といえば、戦前では実験的な映画を撮るアヴァンギャルドな監督で世界的に有名なので、気になっていた監督の一人だ。どんな映画を撮るのか、楽しみにしていた。この映画を見た限り、非常に画面の構図を計算している人だということがわかる。この映画の特徴は、たとえば障子やふすまなどをつかって画面を分割していることだ。画面のなかに、枠に囲まれた空間をつくり、その狭い枠のなかに人物を収めるようにしている。特に、ヒロイン役の山本富士子は枠に囲まれている印象が強い。
勝新太郎が、ヒロインに対し秘かに愛情を持っていて、怪我をさせたということで、ひたすらヒロインに仕える男を演じるのだけど、この男が怪しい。いくらなんでも、ヒロインに付きまといすぎなのではないか。いつでも、どんなときでもヒロインを守るために付いてくるのだ。今ならストーカーと言ってもよいほどだ。ヒロインはこの男の振舞いに困りながらも頼りにしているところがあり、そう考えると、ヒロインは一体先生が好きだったのか、このストーカーのような男が好きだったのかがはっきりしない。最後に悲劇があり、ヒロインと男が死ぬことになるが、このときヒロインは男を呼ぶのだから、いつしかこの男を愛するようになったのだろうか。