廣木隆一『やわらかい生活』

◆『やわらかい生活』監督:廣木隆一/2005年/日本/126分
原作は絲山秋子の「イッツ・オンリー・トーク」。この小説は以前読んだことがあるが、かなりよい作品だった。なので、この映画は絶対に見ようと決めていた。映画は、小説とはやや異なる物語だった。寺島しのぶが演じる「優子」と豊川悦司が演じる「祥一」の二人がメインになっていた。とはいえ、他の個性的な登場人物(優子の同級生で都議会議員とか紳士的な痴漢とか鬱病のやくざとか)もしっかり出てくる。痴漢役の田口トモロヲがけっこうよい。
都会のなかの「孤独」な人間が一瞬だけ交わり、また離れていくといった物語で、単なる癒しの物語に終始するわけではなく、最後などけっこうキツイ終りかたをするなと思った。
映像は基本的に「赤」と「青」を基調にしており、そこからこの映画は赤と青の物語と言えるだろう。優子は主に「赤」のイメージで、祥一が「青」のイメージを担う。この色彩はどぎついものではなく、それこそ映画全体に「やわらかさ」を出していたように思える。