バシュラール『空間の詩学』

ガストン・バシュラール岩村行雄訳)『空間の詩学ちくま学芸文庫、2002年10月
昔読んだときは、面白い本だと夢中になった。しかし、読み直してみたら、どこが面白かったのか分からなくなってしまった。
精神分析とか心理学的な研究がたびたび批判されている。訳者の解説によると、バシュラールはそもそも精神分析を用いた研究をしていた。たとえば『火の精神分析』などがある。したがって、精神分析の方法を批判するということは、以前の自分の方法に対して批判を加えていることになる。
はじめ、バシュラールは客観と主観をきれいに分けて、いかにして客観を把握するのかということに関心があったという。しかし、純粋な客観を認識しようとしても、どうしても主観が入り込む。主観と客観は分けられない。主観と客観の二元論がおかしいのではないか、という方向へ転換していく。
そのきっかけとなる本が、この『空間の詩学』ということになる。この本のキーワードは「イメージ」あるいは「夢想」だと言えるが、ある対象に対してわき出てくる「イメージ」そのものを、われわれの「夢想」そのものを現象学でもって検討してみようではないか、ということだろうか。したがって「イメージ」や「夢想」の原因を探ろうとする精神分析や心理研究が批判される。そのように原因を遡行してしまうと、「イメージ」そのものの考察にはならない。「深さ」ではなく「表面」に留まる姿勢に、バシュラールがこだわっているのだ。
このようにして、バシュラールは「内部」と「外部」の二元論を克服しようとする。その問題を論じた第九章の「外部と内部の弁証法」は、必読だと思う。

空間の詩学 (ちくま学芸文庫)

空間の詩学 (ちくま学芸文庫)