保坂和志『アウトブリード』
◆保坂和志『アウトブリード』河出文庫、2003年4月
保坂和志の小説は全部読んだので、次にエッセイに移る。
この本を読むと、けっこう現代思想を読んでいるのだなと分かる。ドゥルーズやラカン、デリダ、それからニーチェやフロイト、ハイデガーなど。とはいえ、保坂は何もこれらの思想家を読み解こうとしているわけではない。ただ自分自身の思考の糧とするために、必要なところだけ読むのだ。現代思想のほかにも、物理学への強い関心も興味深い。保坂はアインシュタインではなく、ハイゼンベルグを熱く語る。保坂を夢中にしたハイゼンベルグが気になる。
保坂は樫村晴香への手紙のなかで、こんなことを書いている。
ぼくには小説という形式がとても合っているらしく、小説を書く過程で一つ何かが進歩しています。ハイデガーやラカンやデリダを読みかじりつつ小説を書く――を繰り返しているだけで、それらの本に書かれていることの理解が増えています。(p.203)
論文とか批評といったスタイルではなく、小説というスタイルで思考する保坂。どうして、小説という形式が保坂の思考と合うのか。
- 作者: 保坂和志
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2003/04/01
- メディア: 文庫
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