矢口祐人『ハワイの歴史と文化』

◆矢口祐人『ハワイの歴史と文化 悲劇と誇りのモザイクの中で』中公新書、2002年6月
ハワイのことを何も知らなかったなあと痛感する。「南国」「リゾート」...etc、そんなイメージしか持っていなかった。ハワイといえば「南の島のハメハメハ大王」の歌のイメージしか思い浮かばなかった。(まだハワイは行ったことがないし。)
こんな貧しいイメージしか持っていない私なので、本書を通じてハワイの歴史を知って驚くことが多かった。かなり過酷な抑圧と支配を受けてきたのだなと。
本書は大きく4つの章に分かれている。第1章では、移民の歴史としてとくに日本から移民、日系人の歴史を辿る。サトウキビ畑での厳しい労働など、移民第一世代の過酷な生活が浮かび上がってくる。第2章は「リメンバー・パール・ハーバー」ということで、戦争下のハワイを取り上げ、ハワイの人々が戦争をいかに経験したのか考察される。第3章は、「憧れのハワイ航路」ということで、ハワイ観光の歴史が分析される。第4章は、第3章まで触れてきた時代よりもさらに以前の歴史を振り返る。ハワイがどのような経緯をたどって、現在に到ったのかが述べられる。
カメハメハ大王が何をした人なのか、これまでまったく知らなかったのだけど、伝統を保ちつつ、西洋の技術を導入しハワイを統一した、すなわち「外界との接触を巧みに利用した策士」(p.183)であった人物だったと知った。言わば、ハワイを近代化に導いた人物なのだろうけど、この後、ハワイは白人の支配が進み、やがてハワイ王朝が倒されアメリカに併合されていく歴史は読んでいて辛い。「楽園」でもなんでもないなあと。
私の「ハワイ」についての貧しいイメージを変えた貴重な本だ。

ハワイの歴史と文化―悲劇と誇りのモザイクの中で (中公新書)

ハワイの歴史と文化―悲劇と誇りのモザイクの中で (中公新書)