蓮實重彦『ゴダール革命』

蓮實重彦ゴダール革命』筑摩書房、2005年9月
期待していたほど面白いものではなかった。やはり以前に書いた文章が載せられているからだろうか。
それにしても、ゴダールの評論なのに、いつものように鋭い指摘がないなと思っていたら、この本はたとえば『監督小津安二郎』やそのうちに出版されるであろう「ジョン・フォード論」のような「映画評論」なのではない、と最後に書いている。では、本書は一体何なのかというと、この本は「ドキュメンタリー」なのだと言うのだ。

 ここに『ゴダール革命』として読まれた書物は、それがかりに錯覚であるにせよ、「アメリカ的」であることと「偉大」であることとが矛盾なく共存しえた一時期に、「ハリウッド映画」に目が眩んでしまった二つの個体が、「アメリカ的」であることと「偉大」であることをともに放棄してしまった「ハリウッド映画」の半世紀をどのように過ごしたかをめぐるいささか陰惨な「ドキュメンタリー」にほかならない。陰惨なというのは、当時はまだまだ若々しかったその二つの個体が、いまやともに老境にさしかかっていながら、なお、半世紀以前の錯覚から完全に自由だとはいえそうにないからだ。(p.240)

つまり、本書は「撮ること」と「見ること」の永遠に決着のつかない闘争の「ドキュメンタリー」ということらしい。

ゴダール革命 (リュミエール叢書 37)

ゴダール革命 (リュミエール叢書 37)