ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』

◆ルートウィヒ・ウィトゲンシュタイン(中平浩司訳)『論理哲学論考ちくま学芸文庫、2005年5月
昔、2、3度読んだことがある本。新しい訳の本が、ちくま学芸文庫から出たので、もう一回読んでみた。自分が成長したかどうかを確かめるために。
しかし、今回もこの本の内容を理解することが出来なかった。まだまだ哲学の勉強が足りないことを思い知る。
中身の要約は、ウィトゲンシュタイン自身が、序のなかで「およそ語れることは明晰に語れるし、それゆえ論じえぬことについては黙さねばならぬ」(p.9)と記してあるし、全体は7つの命題で構成され、各命題に注釈を付けていくというのは本書のスタイルであることは、すぐに分かる。
私はまだまだ読み方が分かっていないので、この本のアフォリズムめいた短い断章に、神秘性を感じて訳も分からず崇拝してしまうのだけど、こういう読み方はどうやら間違ったアプローチなのかもしれない。そのようなことを訳者があとがきのなかで説明していて、このあとがきは私には目から鱗が落ちた。
訳者が言うには、「この本は徹頭徹尾形式的用語で語られている(p.214)」そうだ。だから、私のように神秘性なり短い言葉のなかに、深い意味を見出そうとしても埒があかない。

何か実質的内容を読み込んでしまうと、どんな解釈も可能だというあいまいな状況におち込むばかりなのである。主要な七つの命題は勿論、本書全体がたいへん抽象化された形式的議論なのである。(p.214)

こういうことをきちんと踏まえないとダメだったのだなあと反省する。事態とは何かとか、事実とは具体的に何かと問うてしまうと泥沼に落ちてしまう。したがって、訳者は本書を「形式的・抽象的議論」として取り上げねばならないと述べている。以下、この立場から訳者が本書を解説しており、この解説が私には参考になった。次はまだ未読の岩波文庫の野矢氏の訳のほうを読んでみよう。

論理哲学論考 (ちくま学芸文庫)

論理哲学論考 (ちくま学芸文庫)