三隅研次『女系家族』

◆『女系家族』監督:三隅研次/1963年/大映/111分
原作は山崎豊子。撮影を宮川一夫が担当している。出演も豪華。若尾文子京マチ子田宮二郎に中村雁治郎。山崎豊子の原作で、田宮二郎と言えば『白い巨塔』を思い出す。とにかく、出演している俳優みんなアクが強いというか、個性的というか。三姉妹の伯母役の浪花千栄子と番頭役の中村雁治郎は、脇役なのに目立つ。この映画では、特に小悪人の中村雁治郎が印象的だった。中村雁治郎の顔と、せこせこと小金を得ようとするいやらしさがぴったり当てはまっているのだ。
それにしても、この物語は、最後に亡くなった父親が仕掛けておいた罠がすごい。三姉妹や伯母、そして番頭の悪巧みをすべて見透かしていたように、遺産相続の決定の瞬間における大逆転。この時の若尾文子の振るまいが見事。若尾文子の出現によって、莫大な遺産を得ようとしていたもくろみが崩壊する。その時の、三姉妹の虚無感を、宮川一夫のカメラがうまく捉えていた。父親と母親の写真と姉妹の姿をゆっくりとした移動でカメラは収めていくところがよい。