講談社文芸文庫編『戦後短篇小説再発見17』

講談社文芸文庫編『戦後短篇小説再発見17 組織と個人』講談社文芸文庫、2003年12月
第17巻は、「組織と個人」。はじめは、珍しいテーマだなと思ったけど、よく考えれば、「国家」や「軍隊」、果ては「企業」と個人の関係を描いた文学なんて別段珍しいものではないのか。

  • 中山義秀「あやめ太刀」…○、「戦後短篇小説再発見」では珍しい時代小説。なぜか運良く危機を乗り越えてしまう男の人生。
  • 梶山季之「族譜」…◎、これは傑作。朝鮮において日本が行った「創氏改名」をモチーフにしている。コロニアル文学として重要。
  • 中野重治「第三班長と木島一等兵」…○、まあまあ面白い。
  • 新田次郎八甲田山」…◎、これは読み応えがあった。有名な「八甲田山死の彷徨」の原型。
  • 富士正晴「足の裏」…△、富士正晴の小説はやっぱり面白くない。
  • 城山三郎「調子はずれ」…○、城山三郎の作品は、私には縁がないなあと思っていたけど、こんなところで読む機会に出会うとは。体育会のような会社の新人研修を描く。こうしたサラリーマンが、高度経済成長を担ったのだなあと感慨深い。
  • 佐多稲子「疵あと」…○、左翼運動と女性の運命。
  • 黒井千次「椅子」…◎、これも傑作。たった一つの「椅子」が、会社全体を揺るがす。
  • 石原慎太郎「院内」…×、これもつまらない作品。私は石原慎太郎の作品を今後も絶対に認めないだろうと思う。
  • 辻原登「松籟」…○、自己啓発セミナーのようなものを舞台にした小説。カフカの作品のような雰囲気。

戦後短篇小説再発見17 (講談社文芸文庫)

戦後短篇小説再発見17 (講談社文芸文庫)