講談社文芸文庫編『戦後短篇小説再発見9』

講談社文芸文庫編『戦後短篇小説再発見9 政治と革命』講談社文芸文庫、2002年2月
第9巻は、「政治」だ。このテーマはけっこう好きなので、収められているどの短篇小説も面白かった。「政治」をテーマにすると、作家は実験的な作風に向かうのだろうか。「政治」をテーマにしている作家は、内容もさることながら、文体つまり表現の「形式」を非常に重視しているさまがうかがえる。「政治」とは「形式」の問題なのかもしれない。

  • 田中英光「少女」…○、少々甘い内容かもしれないけど、良かった。
  • 林房雄「四つの文字(或る自殺者)」…○、うーん。
  • 堀田善衛「断層」…○、「日本とヨーロッパしか念頭になかった」(p.85)という「安野」の世界が変貌するラストシーンは考えさせられる。
  • 野間宏「立つ男たち」…○、疑心暗鬼の世界。
  • 埴谷雄高「深淵」…○、難しいけど、面白い。
  • 倉橋由美子「死んだ眼」…○、「政治」から逃げ続けること。
  • 井上光晴「ぺぃう゛ぉん上等兵」…△、ひらがなとカタカナの争い。
  • 古井由吉「先導獣の話」…○、先導する男。
  • 金石範「虚無譚」…○、在日文学者にとっての「八月一五日」という問題。
  • 高橋和巳「革命の化石」…△、高橋和巳は長篇小説のほうがいい。
  • 開高健「玉、砕ける」…○、老舎の話が興味深い。
  • 桐山襲「リトゥル・ペク」…○、無秩序になる都市。