講談社文芸文庫編『戦後短篇小説再発見9』
◆講談社文芸文庫編『戦後短篇小説再発見9 政治と革命』講談社文芸文庫、2002年2月
第9巻は、「政治」だ。このテーマはけっこう好きなので、収められているどの短篇小説も面白かった。「政治」をテーマにすると、作家は実験的な作風に向かうのだろうか。「政治」をテーマにしている作家は、内容もさることながら、文体つまり表現の「形式」を非常に重視しているさまがうかがえる。「政治」とは「形式」の問題なのかもしれない。
- 田中英光「少女」…○、少々甘い内容かもしれないけど、良かった。
- 林房雄「四つの文字(或る自殺者)」…○、うーん。
- 堀田善衛「断層」…○、「日本とヨーロッパしか念頭になかった」(p.85)という「安野」の世界が変貌するラストシーンは考えさせられる。
- 野間宏「立つ男たち」…○、疑心暗鬼の世界。
- 埴谷雄高「深淵」…○、難しいけど、面白い。
- 倉橋由美子「死んだ眼」…○、「政治」から逃げ続けること。
- 井上光晴「ぺぃう゛ぉん上等兵」…△、ひらがなとカタカナの争い。
- 古井由吉「先導獣の話」…○、先導する男。
- 金石範「虚無譚」…○、在日文学者にとっての「八月一五日」という問題。
- 高橋和巳「革命の化石」…△、高橋和巳は長篇小説のほうがいい。
- 開高健「玉、砕ける」…○、老舎の話が興味深い。
- 桐山襲「リトゥル・ペク」…○、無秩序になる都市。
- 作者: 講談社文芸文庫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/02/08
- メディア: 文庫
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