講談社文芸文庫編『戦後短篇小説再発見8』

講談社文芸文庫編『戦後短篇小説再発見8 歴史と証言』講談社文芸文庫、2002年1月
この第8巻は、「歴史」がテーマとなっている。戦後の文学で「歴史」といえば、やはり「戦争」ということになるのだろうか。この巻は、ほぼ「戦争」関連の話だった。

  • 平林たい子「盲中国兵」…○、「ここに宮様がいるぞ。真物だぞ」という作者が言う「高松宮」となぜか盲目の中国人の兵たちがいる光景。
  • 阿川弘之年年歳歳」…○、戦争を生き延び、そしてまた日常の生活が始まる。
  • 中野重治「おどる男」…○、「不快」という感情を言語化する。
  • 三浦朱門「礁湖」…○、救いようのない命…。ここには「死」しかないのだ。
  • 富士正晴「帝国軍隊に於ける学習・序」…×、平凡。
  • 佐多稲子「雪の峠」…○、良い。
  • 水上勉「リヤカーを曳いて」…○、「八月一五日」を文学や映画が、これまでどのように表象してきたのだろうか。こんな四方田犬彦のような問いを立てたくなる。
  • 吉野せい「麦と松のツリーと」…○、みんなそれぞれの「戦争」体験を持っているものだとあらためて感じる。
  • 田中小実昌「岩塩の袋」…◎、ひょうひょうと語られる悲惨な戦場。語り口と状況のギャップがすごい。
  • 李恢成「馬山まで」…○、祖国とか民族とか。
  • 坂上弘「短い一年」…△、サラリーマン小説。