小熊英二『日本という国』

小熊英二『日本という国』理論社、2006年3月
これは、中学生あたりに向けて書かれているのかな。そのために、かなり易しく書かれてあってよい。
日本という国がどのようにして形づくられてきたのか。近現代の日本について論じる。取り上げられているのは、明治の日本と戦後の日本。明治の日本では、福沢諭吉の文章を読みながら、特に教育と国家の形成について論じる。戦後の日本は、アメリカの占領政策から、憲法問題や自衛隊、戦後補償の問題を論じる。ここでは、戦後の日本を形づくってきたのは、アメリカとの関係が大きいことが分かる。「戦後の日本の外交は、ごくごくおおざっぱにいえば、アメリカとの関係さえよくしておけば、アジア諸国との関係は何とかなる、というものだったといえなくもない」(p.184)というわけだ。しかし、特に冷戦が終わってしまった90年代以後、こんなことはもう通用しない。
本書は、最後に丸山眞男がサンフランシスコ講和会議を前に書いた文章を引用して締め括っている。この引用された文章のなかで丸山は、明治維新後、日本はアジア最初の近代国家として、アジアのホープであったが、ヨーロッパの帝国主義の尻馬に乗って、アジアを裏切った。日本の悲劇は、アジアのホープから裏切り者への変貌にあったという。そして、敗戦によって日本はもう一度明治維新に戻り、再びアジアの裏切り者としてデビューするつもりなのかと述べている。「アジアの裏切り者」とならないために、さてどうするか。

日本という国 (よりみちパン!セ)

日本という国 (よりみちパン!セ)