中村真一郎『大正作家論』

中村真一郎『大正作家論』構想社、1977年2月
取り上げられている作家は、谷崎潤一郎、長與善郎、豊島與志雄芥川龍之介佐藤春夫北原白秋萩原朔太郎である。芥川龍之介が一番多く論じられているが、あまり面白くない。それよりむしろ、長與善郎や豊島與志雄を論じたところが興味深いものだった。
豊島論の最後に、豊島と芹沢光治良岸田國士の3人を「明治の岸と、戦後の岸との間に、虚空に弧を描いている橋」だと述べている。中村は自然主義中心の日本の文学を批判しているのだが、その中村にとって近代日本の文学は「知識人の文学」であると言う(p.72)。そして、明治の文学は漱石に代表されるとする。その漱石を受け継いだのは、芥川龍之介ではなく、「長篇小説『反抗』を書いた豊島与志雄」だとするのだ。この考えに興味を持った。豊島与志雄の『反抗』を読んでみたい。