ジュリアノ・メール・ハミス『アルナの子どもたち』

◆『アルナの子どもたち〜パレスチナ難民キャンプでの生と死』監督:ジュリアノ・メール・ハミス/2004年/イスラエル/84分
監督のジュリアノの母親であるアルナ・メールは、パレスチナの難民キャンプで、子どもたちに教育支援活動を行い、93年に「もうひとつのノーベル平和賞」を受賞している。この時、アルナは難民キャンプに子どもたちの劇団を作った。映画は、アルナの活動と子どもたちを追いかけたドキュメンタリーである。
アルナはユダヤ人なので、息子で監督のジュリアノに対して、はじめ子どもたちが、イスラエルのスパイなんじゃないかと思ったなどと語っていたが、しかしアルナたちの活動はすぐに子どもたちの信頼を得て、アルナを慕っていたところなどは、驚いたし感動的な話だった。アルナは病で亡くなってしまうのだが、イスラエルの難民キャンプへの攻撃はエスカレートする。ジュリアノが再び、ジェニンのキャンプに訪れたとき、子どもたちの過酷な運命知ることになる。なんと、劇団にいた子どもたちは、その後、自殺テロに加わったものや、戦闘で亡くなったものもいたのであった。
カメラは、割と冷静に難民キャンプへの様子や、イスラエルの攻撃の様子などを捉えており、わざと劇的な効果をねらうなんてこともないのだが、それだけにいっそうこのやるせなさが伝わってくる。どうして若い命が、こうなってしまうのだろうかと。
映画の上映後、現代アラブ文学の研究者の岡真理氏によるトークが行われる。岡氏の説明のおかげで、パレスチナの難民キャンプがいかなるものか、どういう歴史的背景をもっているのかを理解できた。複雑に入り組んだ関係を解きほぐすのは容易ではないなと感じる。