田中徳三『悪名』

◆『悪名』監督:田中徳三/1961年/大映/94分
原作は今東光勝新太郎田宮二郎のコンビが面白い。勝新太郎扮する「浅吉」と田宮二郎扮するやくざの「貞」が出会い、二人で協力して、一人の女性を救う物語。喧嘩が強く面倒見の良い親分膚の勝新太郎もいいのだけど、田宮二郎のやくざ姿がすごくいい。
この映画は、脚本が依田義賢で撮影が宮川一夫ということで、溝口のスタッフがつくっているのがポイント。田中監督は溝口の助監督を努めたとのこと。特に宮川一夫のカメラがすばらしい。ラストで、落とし前を付けるために、海岸で、浅吉が浪花千栄子の演じる親分にステッキで殴られる場面がある。このせっかんに耐え抜いた浅吉は、「俺は勝った」とつぶやきながら倒れてしまう。そして倒れた浅吉を癒すかのように、穏やかな波が浅吉の身体を濡らす。この水の官能性は、『雨月物語』の宮川一夫ならではの映像だと思う。水面のきらめきの美しさに感動してしまう。