田中徳三『続・悪名』

◆『続・悪名』監督:田中徳三/1961年/大映/93分
『悪名』のつづきを描いた物語。大阪に戻ってきた浅吉は、なんの因果か、その強さを見込まれて、やくざの親分となって子分もできてしまう。弟分の貞と二人で、縄張りを運営していこうとするのだが、金がない。そのために、元締めに裏切られ、浅吉たちは窮地に陥る。だが、そのとき、浅吉の元に「赤紙」が届き、兵隊に召集されてしまう。浅吉が兵隊として出て行ったあと、あとを任された貞であるが、雨の中、女房と歩いているところを狙われ、刺されて死んでしまう。
この映画もやはり重要なのは水で、貞が襲われるのが雨の日であることに注意しよう。『悪名』では、水は浅吉を癒すのだが、『続・悪名』では逆に貞に死をもたらしてしまう。水のエロスとタナトスという両義性を活かしたつくりとなっている。またこの場面は、傘をさして歩く貞と女房を真上からの垂直に俯瞰で捉える、そこに画面を斜めに走り込んでくる男が、貞にぶつかる、貞が振り返るショット、刺した男の顔のショットがあって、貞が倒れる、再びカメラが真上からの俯瞰ショットというように構成されていた(と思う)。この一連のショットは、なかなか見事な構成で、ある種の様式美を感じさせる。『悪名』が、生の力を感じさせる終り方だったのに対し、『続・悪名』では、やくざという世界に対し、同時に戦争という時代に対する無常感を漂わせて終わっている。この二つの対比も興味深い。