◆講談社文芸文庫編『戦後短篇小説再発見5 生と死の光景』講談社文芸文庫、2001年10月
第5巻のテーマは「生」と「死」。文学の王道といえるテーマだ。そのためか、収録されている小説は、どれも読み応えがある。しかし、どれも似たり寄ったりで、強烈な個性を持つ小説は見当たらなかった。高齢者と子どもが主人公であったり、戦争が背景となっていたり。感想が書きにくいテーマだ。
- 正宗白鳥「今年の秋」…○、悪くはない。
- 島比呂志「奇妙な国」…○、すぐれた批評。
- 遠藤周作「男と九官鳥」…◎、この巻のなかではもっとも良い小説。ユーモラスでありながら、そのユーモアが「死」と密接な関係を持っているところなど、作者の「死」に対する感性の鋭さを強く感じる。
- 結城信一「落葉亭」…○、死者の集まる「庭」。
- 島尾ミホ「海辺の生と死」…△、タイトル通り。
- 高橋昌男「夏草の匂い」…○、孤独感がどこからくるのか?
- 色川武大「墓」…◎、ことごとくズレてしまう。人生の皮肉か。
- 高井有一「掌の記憶」…○、身体に残る記憶。やや感傷的?
- 川端康成「めずらしい人」…◎or×、評価が両極端に分かれそう。良い小説かもしれないし、駄作かもしれない。ラストをどう評価するか。
- 上田三四二「影向」…△、平凡な小説。
- 三浦哲郎「ヒカダの記憶」…○、はじめ「ヒカダ」って何だ?と思った。
- 村田喜代子「耳の塔」…○、「耳」と「音」をうまく使った小説。
- 作者: 講談社文芸文庫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/10/10
- メディア: 文庫
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